現在、次回作イラストを描いてます・・・。
今回はシーン少な目になるはずです。
自動塗りは使わない予定ですが、大丈夫かな・・・?


以下は続きです。


 

「もう、さいてー!」

 放課後、掃除を終え、クラブまでぶらぶらしている中、愛は悔しそうに言う。

「ったく、減るもんじゃないんだし、いい加減忘れろよ」

 なぜか二組に顔を出す愛をいなしながら、徹も着替えていた。

「皆が見てるまえでパンツとかありえないし……。もう、お嫁に行けない」

 ウソ泣きをする彼女をどうしたものかと思いつつ、ラケットのガットのハリを見る。

「そしたら徹、責任取ってくれる?」

「は? なんで俺なんだよ。この場合、千夏だろ」

「だって千夏とは結婚できないじゃん。それに、徹と千夏って同じ地区でしょ?」

「それこそ関係ねーっての……」

「いいじゃんいいじゃん! 徹のすけべ! 人のパンツ見たくせに!」

「それは俺だけじゃねーだろ」

 彼女の発想なら昭も同じく責任者になるのだが、既に家庭科室へ行って準備を始めているらしく、姿は見えない。

「あーもー! 徹も見せてよ!」

「今見せてるじゃん」

 そう言いながらハーフパンツを穿く徹。白のブリーフが見えていたわけで、彼は嘘を言っていなかった。

「もっとみせろー。セクハラで訴えるぞー」

「なんだそれ。ったく、女が言ってもセクハラはセクハラなんだからな」

 相手していられないと荷物を片づけ、教室を出ようとする。

「もう、待ってよ! ……あれ……?」

「ん? どうかしたのか?」

「んーん、別になんでも……」

 愛は右足を上げ、太ももをぽんぽんと叩く。その後、上半身をぐいっと回す。

「さっきから何してるんだ?」

「だいじょうぶかな? うん、だいじょうぶ」

 ドアで振り返る徹に追いつこうと、愛は足早に教室を出た……。

 

++

 

 バスケットボールの試合中、百合子は無理やりコートを駆け上がっていた。

 いつもならルール違反気味の愛にパスを回しているのだが、今日はなぜか動きが悪い。攻撃時も上がろうとせず、ボールを追う姿勢が見えない。

 たかがクラブ活動のゲームなので勝ちにこだわる必要もないが、手を抜いているとあとあと顧問からお小言をされることもある。それに、強豪である自分のチームはどういう理由であろうと負けてしまえば、相手が調子に乗ってしばらくいい気になって気に食わない。

 百合子は一人、試合に挑んでいた。

 

「ん~……なんだろ」

 辛勝した後、百合子は愛の元へ行った。彼女に文句を言うつもりだったが、足を押えている。そして腰を回そうとすると、いつもより固いような印象を受けた。

「どうしたの?」

「んと、なんか身体が固いっていうか、動かそうとすると痛いみたい」

「ああ、そっか。今日の合同体育であんた、転んだもんね。パンツ見せながら」

「もう! いいでしょ、その話は!」

 皆にパンティを晒したことを思い出して真っ赤になる愛。

「あはは。まあまあ……。それより、あの時転んで捻ったんじゃない? まだ痛むんでしょ?」

「うん。どうしよう……」

「保健室でシップもらったら? 長引いてもいいことないよ」

「そっか。そうだね」

 愛は頷くと顧問に身体の痛みをいい、保健室へ行くことを伝えた。

 

++

 

「別に平気なんだけどね」

 一人でも行けるが、一応付き添いということで百合子もついてきた。

「ま、あたしも暇だし構わないかな」

 百合子は腕を頭の後ろで組みながら愛の後をついていた。

 最近は健介と真奈の関係も良好であり、それを見せつけられるともやもやしてしまう。それを醜い気持ちと感じ、ごまかすためにも二人を見ない理由が欲しかった。

「あれ? 千夏だ」

 保健室へ行く途中、トイレから千夏が出てきた。合同体育で転んだ原因は千夏にもある。多少なり嫌味の一つを言いたい愛は、ずんずんと歩く。

「もう、千夏のせいで酷い目に遭ったんだからね」

「ごめんごめん。ほら、勝負に熱くなる性格だからさ」

 千夏は手を合わせて拝むように謝る。その瞳はうるっとしており、泣いているようにも見えた。

「まあ、そこまで反省しているなら許すけどさ……」

 額に汗を浮かべながら必死そうに言う彼女を前に、それほど強くも言えそうになかった。

「っていうか、愛はなんでこっちに? バスケはいいの?」

「保健室でシップもらうんだってば。そっちこそなんで?」

「え? ええと、ほら、保健室行くつもりだったけど」

 言葉につまり、目を泳がせる千夏だが、愛は特に気にする様子もない。

「ついでにトイレ? ふうん。じゃあ一緒に行く?」

「ええと、そうだね。いこっか」

 千夏はそういうと足早に保健室へ行こうとする。

「もう、待ってよ」

 愛達はその後ろをついて歩いていった。

 

 

 保健室では元治がシップを用意してくれた。

 彼は痛む箇所に貼るようにと適度な大きさに切り、愛に渡す。

「貼ってくれないんですか? 自分だと貼りづらくて」

「ごめんごめん。柳瀬さんが恥ずかしがるかと思ってさ」

 彼なりに気をつかったらしいので、千夏が代わりにシップを受け取り、貼ってくれる。

 体操服を捲りあげてぺたりと貼る。その間、元治は目を逸らす。

「はい、おしまい。それじゃもどろっか」

「うん。少しはよくなったかな?」

「そんなに早く効くわけないでしょーが」

 百合子は苦笑いしつつ、保健室の戸を開けた。

「あ……」

 戸を開けると達郎の姿が見えた。トイレから出て来る途中だったらしく、百合子を見ると背を向ける。

 修学旅行を終えてから、今も関係はぎくしゃくしたまま。教室に迎えに来ることも無く、こそこそと帰宅する彼の話はおせっかいな子が教えてくれる。

 最近の苛立ちの原因には、なにも真奈と健介だけではなかったのだ。

「達郎君? おーい、どこ行くの? 百合子はこっちだよ」

 そんなことを知らない愛は声を上げて彼を呼び止める。

 百合子は内心、余計なことをと思いつつ、とぼとぼと戻ってきた達郎に視線を逸らす。

「や、やあ、柳瀬さん」

「うん。ほら、百合子はここに居るんだから、目を離しちゃだめだよ。じゃないと徹に取られちゃうんだから」

「徹に……」

 徹の名前が出た途端、達郎は唇をゆがめ、歯ぎしりのごりぎりと音がする。だが能天気な愛は気付かない。

 百合子はもうこれで終わりかなと思いつつ、頭を掻き、達郎を見る。

「別に徹とは何もないって……。ほら、戻るよ」

 弁明をしたところで達郎はきかないだろう。彼の温和な雰囲気の裏に隠されていた執着する性格は、時間を置く以外におさまりがつかない。百合子もいろいろ話にくいことを抱えている以上、しつこい彼は苦手になり始めていた。

「そうなんだ。百合子と徹ってそういう感じなんだ」

 そんな会話をわざわざ拾ってくれる千夏に、百合子は頭が痛くなる。

「最近、仲いいよね? ね?」

 徹を狙っているだろう愛がわざとらしく探りをいれてくる。彼女からすれば、百合子は達郎をキープしつつ、徹に手を出すやな女なのだろう。

「そんなことないし……」

 ちらりと達郎を見ると、彼は無表情で拳を握っていた。

「というか、まだあんなこと気にしてるのかよ」

「だって、僕は……」

 修学旅行の時のことを根に持っている達郎と、めんどくさそうな百合子。そこを詳しく知らない愛だが、二人の距離を縮めることが自分に都合が良いと、二人の間を興味深そうに見つめる。

「仕方ないよね。でも、達郎君も反省してるし、百合子も赦してあげなよ」

「……別に許すもなにも、ああいうことしないんであれば、あたしも怒らないというかさ……」

「だってよ、ほら、達郎君。意地はってないで謝ろうよ」

「うん……。ごめんなさい、百合子さん」

「もういいって。な、達郎」

 軽く頭を下げる達郎に、百合子は目を逸らして頷いた。

「これで一件落着ね。達郎君は振られちゃったけど、元気だしてね」

「え……」

 千夏の言葉に皆、はっとして彼女を見る。

「可哀想にね。あんなに尽くしても捨てられるときは捨てられるんだ」

「萩さん?」

 唐突な突き放しに達郎は苛立ちよりも困惑していたのかもしれない。

「振られたモノ同士、新しい恋を見つけようね」

 千夏はそういうと彼の肩を押して廊下を出る。

「……え?」

 残された愛は首を傾げつつ、二人の背中を見つめる。彼女の想定としては、達郎が再び百合子にアタックするのだろうと思っていたが、それをすっかりかすめ取られてしまった。

「千夏って失恋してたの?」

「あたしが知るか」

 しばし固まりつつ、二人は立ち尽くしていた。