結局僕は萌夏と別れた。何度か話し合いを持ったもののすでに彼女はおかしいほどに金田に心酔してしまっていて僕の声は届かないようだった。彼女にとっては金田のことが理解できない僕がおかしいらしい。そしてそんな状況だったので必然的に僕には職を辞するほかなくなってしまった。正直会社や社長の金田はともかく仕事自体は嫌いではなかったので気は進まなかったのだけれども。


 そして離婚と失職して1年が経った。正直言って未だに立ち直れていない。幼馴染だった萌夏の面影は簡単に消えるものではなく、悪意の詰まった彼女の告白は未だ夢に見てしまう。そんな状況だから、新しい仕事を探すことにも前向きになれず失業保険が切れた後も漫然と鬱々とした日々を過ごしていた。


 そしてそんな冴えないある日、気晴らしにアダルトショップに入った僕はついに気が触れたかと思った。だってそこにあるはずのない彼女の面影を見つけたから。いやいやいやいや、いくらあの最低の金田だってそんなことはしないだろう、そう思った。でも、そのパッケージに踊る馬鹿馬鹿しいタイトル、『本当にあった企業の性接待!噂のあの企業の裏側を徹底取材~会社にすべてを捧げた今時のOL達~』はあまりにも気になった。パッケージには軽く目隠しが入っていたが、中の動画に顔の修正は入っていないと書かれていた。


 思わず僕はそれを手にとって買ってしまっていた。


 家に帰って再生する。下手くそなナレーションがさえずる。


『不景気な中で生き残りをかけた企業の競争が激化する中、一部の企業は性接待を激化しているという噂がある。我々はその噂の真偽を確かめるべく、とある有名ベンチャー企業、(ピー)コーポレーションに取材に向かった』


映し出されるのは僕のよく見知った廊下。明らかにそれは僕の前の職場だった。


『ここが性接待の噂のある部署だということだが…』


そう言ってとある扉が映される。『企画5課』と扉には書かれている。僕がいたときには企画課は4課までしかなかったはずだが…。

 

動画の中で扉がノックされ、中から女性が出てくる。桑原萌夏だ。背格好やスタイルは僕が知る彼女のままだ。ただ少し化粧が濃くなり頬がコケた印象を受けることを除けばだが。


 カメラが部屋の中に入る。部屋はパーテーションで3つに区切られていて、現在映っているのは高級なソファが置かれた接待スペースのようなところだ。


「よろしくお願いします。(ピー)コーポレーション企画5課課長の桑原萌夏と申します。よろしくお願いします」


 そういって名刺を差し出す。彼女の後ろにもう一人若い女性社員がいて続いて名刺を差し出してくる。


「よろしくお願いします。同じく企画課の上原翔子です」


 おっとりして世間知らずっぽい顔立ちだ。化粧はやはり少し濃い目で体のラインがかなり出るパッツンパッツンのスーツを着せられている。小柄だが出るところはでていてそれでいて太っている印象は受けない童顔の女性。金田の好みだ


 AV男優らしき優男がソファに座る。その横に先程の若い女性が座り、向かいに萌夏が座った。


「えっと、どういった格好がよろしいでしょうか?」


そう言いながらゆっくりと誘うようにブラウスのボタンを上から4つまで外していく。白い素肌が白い

ブラウスのすき間から見え、黒いセクシーな下着が谷間とともにのぞく。


「じゃぁ、体の中で萌夏ちゃんが一番気に入っている場所を強調してくれるかな?」

「ふふ、それじゃァもちろんココです。オンナなら当然ですよね」


そう言ってゆっくりとピチピチのタイトスカートをまくり上げていく。むっちりとした萌夏の太ももの間から普段見えてはいけない場所が室内の蛍光灯の光に晒される。黒いメッシュ地の下着は透けていて挑発的だ。だが、何よりも狂気を感じるのはその下着に会社のロゴが大きくプリントされていることだった。


「すごい下着っすね」

AV男優が若干引いたように言う。


「ふふ、これは我が社の女性社員全員が着用を義務付けられているものです。これを履くことで常に私達が会社という組織の一員だと感じることができます。それに他社の方とミーティングするときに言葉にしないでも私達の会社をプロモート出来ますし。


 ほら、翔子さん。お話している間もきちんとマッサージして差し上げなさい」

カメラがAV男優の方を映す。いかにもチャラい金髪でジーンズにTシャツの清潔感のない男の隣にさっき上原翔子と自己紹介した新人らしき女性が密着して座っている。萌夏と同様にオフィススタイルのスーツのもともと短いタイトなスカートをわざと開き、会社のロゴが見えるようにして座っている。


 そして今萌夏の指示に従っておそるおそると言った感じで彼女の白い指が男の子間に伸びていき、服の上から陰部を触るように優しくマッサージし始める。カメラが恥ずかしそうに迷いのある指使いを映し出し、逆にそこに背徳的なものを感じ取ってしまう。


「申し訳ありません。翔子さんはまだ社外の方にサービスすることに慣れていないんです」

「いやいいっすけど、本当にこんなサービスをしてるんっすね。ってか、カメラにとって大丈夫なんすか?」


声だけで何も考えていなさそうなインタビューの音声とともに再びカメラが萌夏を映し出す。胸元やパンツを見せて妖艶さを出しつつも真面目な顔で喋る姿は逆に滑稽ささえ感じさせる。


「はい。当社のユニークなホスピタリティを広く社会に知っていただいて、より優秀な人材に来ていただきたいですし、お取引ができるパートナー様が増えることを期待したいです」


「優秀な人材ですか。ということは社内でもエッチしてるんっすか」

恥ずかしそうにもせずに当然という風に萌夏が答える。


「はい、その通りです。我々企画5課はもともと社内の、役員と将来有望な若手の社員のクリエイティビティにインセンティブを与え、外の風俗やキャバクラでお金を浪費しないように福利厚生の一環として設立されました。もちろん無能な社員は存在すら知りません」


そう萌夏が言い放つ。僕はドキッとっする。心臓が締め上げられるようだ。前に萌夏に見せつけられたときのような不条理に息苦しさを覚える。


「へー。キャバクラや風俗の代わりなんっすね」

「はい、接待のキャバクラでいったいいくら使われていると思いますか?当社の社長の(ピー)はそのコストをカットするソリューションとして社内で賄うことにしました。こうすれば社内のシークレットは守れますし、お金もかかりません。そしてその延長線上で性的サービスも教育し始めたのです。


「でも、キャバクラとか風俗行くのって仕事終わりじゃないっすか、それはどうなんっすか。あっ、この娘触っていいっすか?」


「ハイ、ご自由にどうぞ。

ですから今日のような特別なときを除いて、5課の職員は普段は他のポジションで働いていて就業時間後にこの部屋にきます。5課の職員は全員会社に住み込みなので深夜でもいつでもサービスが出来ますし、きちんとそのためのトレーニングプログラムも受けています」


「ってか、そんなことを言って、みんな嫌がらないんですか。この娘とかめっちゃなれてないんすけど」


 カメラが再び男の方を映す。翔子が男にしなだれかかりながらすでにズボンの上からでもわかるほどに勃起したペニスを扱き上げている。そして男の方も翔子の胸をスーツの上から揉みしだいている。


「翔子さん、答えて」

そう萌夏が言う。


「はいっ、私達、(ピー)コーポレーションのメンバーは全員社長である(ピー)様の一部です。社のプロフィットを育てるためには個人的なエモーションは捨てて当然です」


「当社の女子社員の採用の最終選考ではビジュアルを重視するため、当社の女子のレベルはかなり高いと考えています。そして当社では『できない』『やれない』『無理』などということを言わないようにポジティブ思考を新人トレーニングのコアとしていますのでご心配には当たらないのです。そうですよね、翔子さん?」


「んん、ハイ。いろんな方と体を重ねることで得られるエクスペリエンスもあると思います。あんっお上手ですぅ」


「素人をオモチャにしてもいいとかどんな会社だよ。

ってかさっきの話だとここの女子社員はみんなヤれるの?ってか、萌夏さんもその場でオナニーしてみてよ」


徐々に増長し始める男。それに抵抗することもなく軽薄な男の言うがままに秘部に指を這わせ始める萌夏。


「はいっ、当社の女子向けキャリアパスはっ、20代のうちは社内で男性社員のお手伝いをしながらぁセックスサービスに従事し…んっ30代頃には優秀な男性社員の妻になってぇんっ…モチベーションフォローぉするかぁ…あんっ取引先のぉ人と結婚して関係を強化しますぅ」