私は前に向き直り、気を付けの姿勢になりました。いや今までもなっていたのですが、それまで以上に意識して真っ直ぐになったのです。
 背後で安西先生がスリッパを掲げるのが、なんとなく気配で分かりました。そして、鋭い痛みがお尻を襲いました。もちろん、癇癪玉が弾けるような音も鳴りました。
 心なしか、西連寺春菜さんの時よりも音が大きかったような気がしましたけれど、深く考えている余裕はありません。
 ジッと立っているためには、気力を総動員する必要がありました。西連寺春菜さんが1回余計に叩かれたのを見ていなかったら、その場に崩れ落ちていたか、あるいは、お尻を押さえながらピョンピョン跳ね回っていたかもしれません。
 私は、唇を口の中に巻き込み、歯でギュッと押さえました。手は、西連寺春菜さんと同じように、握り拳を作っています。そうすることで、ぎりぎり耐えることができました。
 鋭い痛みが数秒で引いていくと、代わりに、熱くなってきました。ビンタの時よりもずっとヒリヒリします。お尻をさすりたい欲求をこらえるのも大変でした。
 安西先生は、スリッパを履くと、私たちの前に回って言いました。
「そんなところに居たら邪魔だ! 壁際で立ってろ!」
 私と西連寺春菜さんは、ブルマに手を掛けました。引き上げようとすると、またしても安西先生の怒声を浴びせられます。
「誰がブルマーを履いていいと言った!? そのままに決まってるだろ!」
「は、はい……」
 私は仕方なく返事をして、壁際まで歩きました。膝のところまでブルマを下ろしたままなので、普段よりも歩幅を小さくする必要がありました。
 西連寺春菜さんも、トボトボと小さな歩幅で私に付いてきます。

 結局、初めての体育は、私と西連寺春菜さんだけ、膝ブルマ姿で壁際に立たされたまま終わりました。
 膝ブルマ姿。誰が最初に言い出したのかは知りませんが、膝までブルマを下ろしてパンツ丸出しになることを、私たちはそう呼びました。
 先輩たちもそういう風に表現していたのを聞いたことがあるので、きっとその影響なんだと思います。上級生から下級生へ。これもまたひとつの伝統というやつでしょうか。
 それからの体育の授業でも、膝ブルマ姿にさせられる女子が、たびたび出てきました。