SS(非エロ)

おためし。りりなのxはつか

長くなったので、続きを読むで。
普通のSSをノリでかこうとしてたら気がついたら一部変態な感じになってしまった上にかいてて非常に楽しかったという……(・ω・

おへんじ
>いつもとは違う雰囲気で、「御褒美です!」と叫びながら蹴られたり、燃やされたりするラファズとか・・!嫌がりながら燃やす初夏とか・・!
すっごい嫌な顔しながらかすっごい無表情で焼いてそう……でもそういう敵って死ななそうだ……(’’
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初夏の日常

 彼女にとって、もはや戦いというものは切っても切れないもの、つまりは日常の一部と化してしまっている。
 朝起きて、顔を洗い、食事を取り、学校へ行き、帰宅する。
 生きていれば当たり前に送ることができるだろう生活の中に、戦いという普通とはかけ離れた要素が彼女の生活サイクルの中には組み込まれている。毎日というわけではない。しかしそれを忘れられるほど日をあけてくれるわけではない。
 結局のところ本当の意味で気が休まることは無いのだろう。もちろんそれは覚悟を決めたときから諦めていたことだ。
 だが、そうして日常からかけ離れてしまい、無くしたものばかりではない。
 戦うということで普通の日常を無くしてしまったのなら、代わりに得たものもあるのだ。独りではない毎日を。
 だからこそ、彼女は戦いから逃げないし、何があっても挫けはしない。
 その日常が尊いからこそ、望んでいたからこそ、何が何でも手放したくないからこそ、それを奪おうとする存在と戦い続ける。例えそれが人として、女としての尊厳を踏みにじられようとも。



 その日は掃除当番だった。
 たくさんの人が集まり半日以上を過ごすこの場所は、それだけの時間が過ぎるだけで驚くほど汚れているものだ。埃だの消しゴムのカスだの髪の毛だのエトセトラエトセトラ。
 だからこそ、一日分の感謝の気持ちを込めて使わせてもらった人間のうち選ばれたものが掃除をして帰るというのがこの私立鳳女学園の慣わしだ。
 上流階級以下、中流以上の家庭を持つ人間が集まり勉学を学ぶこの学園では、本来生徒が掃除をする必要などない。ならば何故やるのかといえば、学園というものにありがちな人間教育だ。およそ半数以上の人間が部屋の掃除は家に雇っている専門の人間に任せているだろうならば、教室の掃除は愚か自らの整理整頓すら危ういこともある。
 つまりは、手遅れになる前の、むなしい処置なのである。
 義務で任された仕事と、任意でやる仕事は大きく違う。教室の掃除ができたからといって自室の整理整頓ができるようになるわけではない、ということに気づいて掃除をしている人間が果たしてこの学園にどれだけいるのか、それ以前にそこまで考える人間はいるのかすら危ぶまれる。

「……」
 
 そんな実情を知ってか知らずか、一人黙々と掃除をする女性、日下部初夏。傾いた日差しが差し込みオレンジ色に染まる教室と初夏は、実に絵になる構図だろう。掃除さえしていなければ。
 教室に響き渡る音は箒で床を掃く音のみ。時折周りの確認のために顔を上げるさいに衣擦れの音がする程度。本当に黙々と、ともすれば息遣いさえ聞こえてきそうなほど静かに掃除をしていた。
 大多数の人間が掃除という作業を嫌がる傾向にある。特に教室やらの掃除に至ってはさらに顕著に現れる。面倒だから、とか汚いから、とか理由は様々である。
 初夏としても掃除自体が好きというわけではない。かといって嫌いというわけではない。でも彼女はこの時間が好きだった。静かだからということもあるけれど、何よりも普通に触れていられるようだからだ。
 教室に残る人の残滓。ふと顔を上げて窓の外に目を向ければ優雅に、そして楽しそうに帰路へつく女の子たちの姿。
 普通だ。実に普通だった。
 この時間だけは、望んでいた普通の生活が簡単に手に入る。それが一人だけで、ただの自己満足だとしても尊い時間だ。本当に。

(これであらかた終了。仕上げの塵取りも完了。黒板、机、窓拭きも大丈夫。後は……ごみ捨てか……)

 悲観するつもりはまったく無い。だが、簡単に日常から崩れ落ちてしまう世界に浸かっている以上、こんな時間があってもいいじゃないか。そう思っていると、余計に普通の世界が、普通の世界に生きる人たちが愛しく見えてくる。そう思えれば、戦って守りたいと思えてくる。日常を。

「――しょ……っ」

 一日の不要物が詰め込まれて少々重みを増したゴミ箱を持ち上げると、その重さに軽く振り回されながらゴミ捨て場へと向かう。
 廊下を歩くとリノリウムを蹴る音が響く。それ以外に音が聞こえないということは、初夏以外の生徒は皆掃除を終えて帰宅したのだろう。初夏と違い多人数でやっているのだ、早くて当然だ。
 一人でやるという事態を招いてしまったのは自分自身だ。戦い同様文句を言うつもりは無い。

(一人……友達……か……)

 一人でいようとした自分。周りがうらやましいと思うことなどなかった。一人でいることが一番落ち着いたし、それ以上は望むことなどなかった。でも、胸に空いた穴は閉じることなく大きくなり、いずれは自らを失ってしまっただろう。
 大切だと思う人がいる自分。弱くなった。一人で要られなくなった。おかえりといってくれる存在がどれだけ温かいかを知った。でも、気がつけば嬉しくなっている自分に気づいた。
 戦いとは違うのに、もう一人には戻れない。しかし戻ろうとも思わない。

(戻りたく……ないわよね……)

 そう、戻りたくない。一人には。
 耐えられないと思う。友達の笑顔を見られないことが、ただいまといえないことが、おかえりといってもらえないことが。
 またね。
 そんな言葉を嬉しくて寂しいと思いたいから。

(……ごみ、捨てないと、ね)

 だから、早く帰ろうと思った。
 きっとお腹をすかせて待っているだろう、血のつながっていない、しかしそれ以上に大切な家族の顔を見るために。
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