潜入調査1

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この学園からラファズの気配がある。とのことなので初夏さんが単独潜入調査を行うことになり、そこから一週間。特におかしな気配を感じることもなく、何事も無い毎日が過ぎていました。
ところが一週間経ったある日の夜、寮で同室となった二階堂真理絵(上)に突然唇を塞がれてちゅっちゅちゅっちゅ……。

何事かと思うまもなく、信じられないくらいの巧みな舌技に、あっという間に力が抜けてしまいそのまま数時間に渡りちゅっちゅちゅっちゅされてしまいます。
実は彼女は淫魔で体液には媚薬の効果があり、それも相まって初夏は数時間の間に何度もイってしまいます。
肌を重ね合わせて頭を抑えられ、蕩けてしまい力の入らない体と頭では抵抗らしい抵抗もできずに、何度も何度も。

この日を境に淫靡な時間が始まります。
でも、今日のちゅっちゅはまだまだ終わりは見えません。
きっとこれから朝日が昇るまでちゅっちゅちゅっちゅされて、失神するほどの絶頂を何度も味わわされてしまうことでしょう。
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丸呑み二日目

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先日よりも肉壁が締まってきたことにより、擦れる強さやらも当然割り増し。最初からほとんどなかった抵抗力のもはやゼロに等しく、出てくる言葉は喘ぎ声と残った理性による拒絶の言葉だけ。未だに吸収されながらの陵辱は初夏にいっときの休息も与えず、延々絶頂を繰り返す。
体はすでに堕ちている初夏の明日は!

というわけで差分です。
いやまぁあまりエロくないのがあれですが。

足りない分は愛と欲望でカバーします。

丸呑み一日目

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本来の力を発揮すれば勝てない相手ではないのに、何かしらの要因で全力を出すことができずに、なす術もなく敵にその身を丸々飲まれてしまい、体内でモチュモッチュされてしまう。当然その体内は媚薬体液だらけで、それをこすり付けられながら、胸やら股間やら、それ以外の肌もモチュモチュされることで、望まない絶頂へ。
力の源である活力も捕食されてしまい、その際に発生する快楽に声にならない歓喜の悲鳴を上げています。こうなったらもう、力は抜けるわ快楽で弛緩してしまうわで、脱出することはほぼ不可能です。
丸呑みした張本人としても、美味しいらしくいつもよりモチュモチュしているようです。

なんていうのを想像しながら描いた、わけではない絵。
とりあえず愛してるから自分の娘を触手や肉壁に差し出すのは正しい愛情表現だと信じて止みません。
愛してるだから絶頂させてあげるんです。

あぁこれが日記か……(’’

はつかのに、ちじょー2

 彼女、日下部初夏にとって休日とは体を休める以上に趣味に時間を当てられる貴重な日でもある。彼女の趣味は読書に料理。読書は読めれば何でも良く、時間と気さえ向けば一日中だって読んでいるくらい。料理も似たようなもので、食材と食べる人さえいればどれだけでも作り続ける。
 そんな趣味なのだが、唯一読書と料理が結びつく瞬間がある。それは料理の本を読むということだ。
 初夏のレパートリーはすさまじく、ともすれば和洋中にデザート類全てを網羅しているのではないかと思えるほどなのだが、それでも毎週料理の本を自室のベッドの上で読みふけていることがある。そうして料理を作るとき、食べてもらえるとき、美味しいといってもらえるときを想像するのが一番楽しいとのこと。好きこそ物の上手なれというもっともな例かもしれない。
 さて、そんな趣味だからこそ、そして休日だからこそ、今は現れていない敵のことを考えるよりもと、料理の本を手に入れるために近くの本屋へと足を運ぶために準備をしている最中だった。

「おや、出かけるのか?」

 気配を感じ取ったのかリビングから顔を出したのは居候神ツクヨミ。

「ええ。ちょっとそこまで、ね。もしかしたら遅くなるから、そのときは適当にしてて」
「できれば帰ってきて欲しいものだがのぉ。毎日の楽しみの一つが遠くなるのは少々辛いものがあるからな」

 本来は力を持った神様だった彼女だが、現在はその大半を失い戦う力を失っている。だがそれを悲観することもなければ、どうにも今まで味わうことのできなかった人の生活を満喫している節がある。楽しみというのは初夏の料理のこと。それが居候を始めた時から一時も忘れることができない楽しみであるらしい。

「まぁ……できるだけ、ね。じゃあ……いってきます」
「うむ、いってらっしゃい、だ」

簡素な服装に身を包み、靴を履き終えると、恐らくは普段浮かべることも無いだろう伝わりづらい楽しそうな表情を向けると玄関をくぐっていった。


 料理の本はそれこそ毎日のように更新されている。人の数だけ料理があるのではと思えるほどにレシピは存在し、それを見ることは本当に楽しいと思う。初夏自身、アレンジができないわけでも無い。むしろアレンジしてより美味しい物に仕上げることができるほどの実力を持っている。が、それはそれ、これはこれなのだ。敵を知り己を知ればというかのように、初夏はこと料理に関してはその探究心を抑えることはできないし、しようとも思ってない。
 知っていればどんな状況にも対処でき、そして笑顔を見ることができるのだ。妥協する理由がどこにも無い。
 そう思えばこそ、足取りは軽く、気分良く向かうことができる……そう思っていた。

「――っ!?」

 一瞬のことだった。何か不遜な気配を初夏は感じ取り、周りが見ていたら不審がるほどの勢いでその方向に向き直った。
 その先にいたのは小さな女の子。初夏をじっと見つめるその瞳にはどことなく暗い光が宿っており、思わず背筋に冷たいものを感じた。
 あれだけ浮かれていたというのにこの気配と視線に気づけたことは褒めるべきだろう。

(こんなタイミングで現れるなんて、ね……)

 何かをしたいときという時は、往々にして障害が発生するものだ。大なり小なりではあるが、それにしてもラファズだなんて、今回は少々大きすぎるだろうと初夏はため息を一つついた。
 すると少女は、それに反応したかのようにそのまま日の当たらない路地へと歩いていった。
 誘われているのは間違いない。だが、恐らく罠だろうという確信が彼女にはあった。今までもこういうことは無いわけではなかった。むしろ今まで彼女が遭遇した数を上げると、両手では足りないくらいになってしまう。その数の中には、少女ラファズのようにわざと自分に気づかせ誘いこみ罠に陥れるというのも珍しくないほどいた。
 蹴散らしたり罠に捕まったりとパターンは数だけあるものの、何にせよ見逃しておくという選択肢は無い。それは人々の……強いては初夏の大切な人たちすら危険にさらすかもしれない行為だからだ。
 もう一度、しかし今度は深い深いため息をつくと、少女ラファズが消えていった方向へ足を向ける。決して急がず慎重に。何度もあったことだ、慌てるほどのことでもない。

「……」

 注意深く周りに視線を送りながら、進んでいく。裏路地ともいえるその場所は、まぶしいまでの光に包まれた表通りと比べてじめじめとした印象が強い。昼間だというのに光はさえぎられて暗く、そのせいで必要以上に胡散臭くて辛気臭い雰囲気が伝わってくる。
 同時に感じるのは禍々しいと言うべきか毒々しいというべき気配。少女の姿は無いが、初夏が見つめるその方向にいることは間違いなさそうだ。一瞬止まった足はすぐさま動き出した。
 裏路地というだけあって道が入り組んでいるか、といえばそうでもなく、ほぼ一直線で少女が来ただろう場所までたどり着いた。
 そして初夏は表情をゆがめた。

「下水道……」

 袋小路であったものの、そこには開け放たれたマンホールが一つ。わざわざ開けておいたのだろう、臭いだけでなく気配まで漂ってきている。
 醜悪な臭いに初夏は思わず顔をしかめながらため息を一つつく。
 行くと決めたのだから行かないことも無いが、わざわざこんなところを巣にすることも無いだろうと、どんなことをしても届きはしないだろう憤りを胸の中で放ちながら、まっすぐの穴に飛び込んだ。
 それと同時に変身するための力を解放する。

「ん……っ」

 今までに何度変身してきたか、それでも体のうちを駆け抜ける感覚はどこか気持ちいいらしく、変身するたびに彼女の口からは艶っぽい声が漏れる。
 落下を続けながら初夏の体は一瞬炎に包まれたかと思うと飛散。次の瞬間には先ほどの格好とはまったく別物になっていた。
 おおよそ怪我ではすまないくらいの縦穴を、逆噴射の容量で能力を放つことで速度を調節し、何事もなかったかのように地面に降り立つ――

「これ……は……!?」

 地面に降りたとき、硬質なコンクリートの感触があると思いきや、伝わってきたのは妙に柔らかなもの。自重ですら簡単に形を変えるほどに柔らかく、その表面はなにやら体液に包まれているようで動くたびにニチャニチャと、人ならば生理的に嫌悪しそうな音がする。
 見渡してみればそれは壁にまで侵食しており、ともすれば下水道のどこまでも続いているようだった。上を見上げれば当然のように出口はふさがれている。
 下水のものだろうまともに吸い込めば頭に直接響いてきそうな臭いの立ち込める敵の巣に、初夏はまんまと入り込んでしまったのだ。

「やれやれね……」

 臭いは気にしなければ我慢できる。この肉の壁も刺激しなければ何とかなると見る。それ以上に気になるのは、これだけのものがあるのにもかかわらず、今まで人の世界に影響がなかったということだ。これほど大規模に自らの巣を、都市の真ん中に作り出していているのに、何かしら不満を訴えるものもいなければ、気配すら感じることはなかった。

(結界で隠してあったにしても、影響がまるで出ないなんてことは……)

 これほど近くにいながら初夏のセンサーに引っかからなかったことも不可解だ。分からないことばかりのせいなのか、本日何度目かになるため息をつく。
 それで気分を入れ替えとしたのか、顔を上げて気配が強い方へと歩き出す。ぶよぶよと歩くたびに嫌に弾力性のある床がどうにも落ち着かないし、歩きづらいようで気がつくと彼女の額からは汗が流れ始めていた。

(まったく……それにこの臭い……汚物の臭いにしてはおかしな感じだけど……嫌な感じね……)

 そんな不満を心の中で漏らしながら数分歩き続けると、下水道の中とは思えないほど広く明るい場所に躍り出た。

「ここが……中央かしら、ね」

 その場所は今まで歩いてきた道と比べ物にならないほどたくさんの、そして大きな肉に覆われていた。一つ一つの肉の塊が生きていることを主張するように定期的に脈動する。ドクンと言う音がいちいち響き渡る。
 
「ようこそいらっしゃいました」

 鈍い音を立てて脈動する肉塊がある場所には不釣合いなほど、鈴とした声が初夏の耳をくすぐった。声のした方向に顔を向けると、肉の柱の上に初夏を誘った少女が優雅に座っていた。 
 黒のロングヘアーを揺らし、白い肌を白いドレスに包んで座る姿はどこか人形のように可憐だった。初夏を見つめる瞳があまりにも暗くなければ、知らず手を差し伸べてしまっていたかもしれない。

「あなたが来るのを待ってました」
「……そう」

 涼やかな声は恐ろしいほど落ち着いており、普通の人間ならば聞くだけで体がすくみあがってしまうかもしれない。現に初夏も声が紡がれるたびに、頭に重さを感じていた。気を抜けば簡単に呑み込まれてしまいそうで、ならばできるだけ刺激しないように、そして何かあればすぐに動けるようにと全身に気を張っていく。

「あなたの噂は聞いていました、神炎。わたしたちの最大級の天敵にして、最大級の食料だと」
「嫌な伝わり方、ね」
「それだけあなたがラファズを倒し、それだけあなたがラファズに犯されたということですね」
「……」

 こともなげに告げられるそれは、初夏にとっては実に不名誉なことだ。一番最初に遭遇したラファズ、リリアーナによって全身を、およそ人間では耐えることができないほど敏感に改造され、ツクヨミの力で何とか少しだけ引き戻すことに成功したが、度重なる陵辱と改造はラファズにとって最高の弱点を持つものとなってしまった。
 ラファズは人から活力という力を効率よく搾取するために、快楽を与えてくる。快楽を与えることによってより上質なものとなるためにどのラファズも例外なくこと快楽を引きずり出すという行為に特化している。それゆえに神の力をもらいうけ戦う彼女たちは、敗北すればラファズの食料とされて助けられるか絶命するまで延々に陵辱され人外の快楽を叩き込まれる。
 本来ならば活動不能、再起不能なほど陵辱を繰り返されているというのに、いまだ正気を保ちその上で戦っていられるのは初夏の異常ともいえるほどに高い精神力があるからこそだ。

「なので、わたしも少しだけご相伴に預かることができればと思い、やってきた次第です」
「誰のご相伴に預かるというのかしら……なんにしても、迷惑な話ね」
「申し訳ありません。ですけど、わたしも生きている以上美味しいものは食べてみたいですから」

 肉の柱の上に立ち上がり、スカートを持ちながら優雅にお辞儀をする少女。雰囲気の柔らかさにつられてか、ふわりと甘い香りが流れて来た。

「あ、謝るくらいなら最初から来ないでくれないかしら? そっちの都合を押し付けられて私のやりたい
ことができなくなってしまったんだから」
(く……っ……何、これ……頭……が……?)
「それは本当に申し訳ありません。ですが、ずっと我慢して来たものですから……どうしても我慢できなかったんです。だから始めましょうか。とっても気持ちよくしてあげますから、ね? 嫌だったら――」

 ウゾリと肉の壁がいっせいに動き出す。

「――全力で抵抗してくださいね!」

 少女の暗い瞳が、鈍く闇色に輝いた。

「――っ!?」

 初夏の頭上から肉の塊が降り注ぐ。具現火能力を発現し、地面に向けて爆発を起こしその勢いで回避する。まるで並のような肉塊は、水に溶け込むようにそのまま消えていく。

「この……!」

 蠢く肉塊がまるで触手のように躍動的に襲い掛かってくる。右から左から上から、果てには下から。それをいち早くさっちし、始点と終点を見極めて回避する。時折間に合いそうに無いものは体を投げ出しながら大きく避ける。
 それにしてもここが少女ラファズの巣だけあって攻撃が激しい。それは初夏も承知していた。動きづらい地形だし、攻撃を受けるわけにはいかないというプレッシャーで必要以上に消耗しているようで、すでに肩で息をして、顔を赤くしている。

(く……! 力が思うように溜めれない……! それに体が……重くて……!)
「逃げているだけ、ということは別に捕まってもいいということなんでしょうか?」

 クスクスと笑うその声が癪に障る。一瞬だけ少女をにらむと、意を決したように全力で足に力を込めると、バーニアのように思い切り噴射した。
 景色が霞むほどの加速。髪が靡き、腰当てもせわしなく風に揺られる。あまりの速度ゆえに反応しきれなかったのか触手肉塊も初夏の背後に落ちることしかできない。
(見えた!)
「ぁ――!?」
 驚愕に見開かれる少女の瞳と重なり合う。手のひらをかざし、足に回していた力を全て前面に込める。彼女の周りに展開する六つの玉が激しく燃え盛り、回転しながら初夏の前にたどり着くと同時に、巨大な炎の塊が飛び出した。
 ともすれば少女の体など呑み込んでもおつりが返ってくるほどの大きさ。火力は周りの肉塊を蒸発させるほど。猛然と敵を噛み千切る龍の顎牙の如く突き進む。

「――――――――っ!?!?!?!?」

 悲鳴は響かない。回避することも防ぐこともできないままに少女は炎に飲み込まれた。立ち上る蒸気が少しずつ晴れてくると、先ほどまで少女がいた場所は完全に消滅していた。気配も無い。

(やった……?)

 着地して、片膝をつく。肩で呼吸をしながら、周りに注意を向けるが肉塊が動く気配もなければ少女が再び顔を出す気配も、それ以前に少女の気配は完全になくなっていた。

(ずいぶんあっけないけれど……本当にもう終わり……?)

 これほど大規模な巣をつくり、初夏たち神様の力を持つものの誰一人にも気づかせることなく出現したラファズが、ただの一撃で倒せるだなどと言うのはあまりにも拍子抜けもいいところだ。
 確かに少女の気配はなくなっているが、 それが逆に不気味だった。

「はぁ……はぁ……」

 なかなか落ち着かない呼吸と、熱い体。アドレナリンでも分泌したんだろう、よくあることだと、重い体を起こそうと――

「っ!?」

 突然肉塊が激しく動き出したかと思うと、初夏に向かって突撃した。一瞬早く察知して横っ飛びに回避する。肉の床を転がり体勢を立て直す……そこで心臓が跳ね上がった。

「う……ぁ……!?」
(な、なにこれ……からだ、が……あつ、く……!?)

 激しく動いたからというわけではない。突如として心臓が跳ねたと思うと、初夏の体がビクンと痙攣した。

(ど、して……こんな……! これじゃ、避けれなく……!)

 動かそうとするたびに熱が体を縛り上げるように邪魔をする。それでも無理やり回避を続ける。半ば気力で動かし続ける。

「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
「必死になって……そんなに嫌ですか? 気持ちよくなることが」
「な、ぁ――!?」
「はい、捕まえました」

 油断していたというわけではない。注意力が散漫になっていたのは誰が見ても明らかだとは言え、それでも全ての肉塊の猛攻を回避していたことは褒められるべきことだろう。だが、姿を見せなかった少女が突然肉の床から生成されたかのように形を作り上げると、背後から初夏を羽交い絞めに捕まえたのだ。
 さすがの初夏もこれにはどうすることもできなかった。

(く……そぉ……)
「それでは、行きましょうか。わたしが勝者になることによって開くことが許される次の部屋へ」
「ふざけ――んむぅぅぅーーーーぅぅーー!?」
(な、何!? これ、どうな……ひ――っ!? んぉぉぉぉ!?)

 一瞬にして視界暗転。それと同時に襲い掛かってきたのは息苦しさと、肌を這う肉の感触。苦しさを覚えながら、背中を駆け抜けるゾクゾクとした愉悦に包まれながら初夏の意識はそこで途切れた。
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初夏の日常

 彼女にとって、もはや戦いというものは切っても切れないもの、つまりは日常の一部と化してしまっている。
 朝起きて、顔を洗い、食事を取り、学校へ行き、帰宅する。
 生きていれば当たり前に送ることができるだろう生活の中に、戦いという普通とはかけ離れた要素が彼女の生活サイクルの中には組み込まれている。毎日というわけではない。しかしそれを忘れられるほど日をあけてくれるわけではない。
 結局のところ本当の意味で気が休まることは無いのだろう。もちろんそれは覚悟を決めたときから諦めていたことだ。
 だが、そうして日常からかけ離れてしまい、無くしたものばかりではない。
 戦うということで普通の日常を無くしてしまったのなら、代わりに得たものもあるのだ。独りではない毎日を。
 だからこそ、彼女は戦いから逃げないし、何があっても挫けはしない。
 その日常が尊いからこそ、望んでいたからこそ、何が何でも手放したくないからこそ、それを奪おうとする存在と戦い続ける。例えそれが人として、女としての尊厳を踏みにじられようとも。



 その日は掃除当番だった。
 たくさんの人が集まり半日以上を過ごすこの場所は、それだけの時間が過ぎるだけで驚くほど汚れているものだ。埃だの消しゴムのカスだの髪の毛だのエトセトラエトセトラ。
 だからこそ、一日分の感謝の気持ちを込めて使わせてもらった人間のうち選ばれたものが掃除をして帰るというのがこの私立鳳女学園の慣わしだ。
 上流階級以下、中流以上の家庭を持つ人間が集まり勉学を学ぶこの学園では、本来生徒が掃除をする必要などない。ならば何故やるのかといえば、学園というものにありがちな人間教育だ。およそ半数以上の人間が部屋の掃除は家に雇っている専門の人間に任せているだろうならば、教室の掃除は愚か自らの整理整頓すら危ういこともある。
 つまりは、手遅れになる前の、むなしい処置なのである。
 義務で任された仕事と、任意でやる仕事は大きく違う。教室の掃除ができたからといって自室の整理整頓ができるようになるわけではない、ということに気づいて掃除をしている人間が果たしてこの学園にどれだけいるのか、それ以前にそこまで考える人間はいるのかすら危ぶまれる。

「……」
 
 そんな実情を知ってか知らずか、一人黙々と掃除をする女性、日下部初夏。傾いた日差しが差し込みオレンジ色に染まる教室と初夏は、実に絵になる構図だろう。掃除さえしていなければ。
 教室に響き渡る音は箒で床を掃く音のみ。時折周りの確認のために顔を上げるさいに衣擦れの音がする程度。本当に黙々と、ともすれば息遣いさえ聞こえてきそうなほど静かに掃除をしていた。
 大多数の人間が掃除という作業を嫌がる傾向にある。特に教室やらの掃除に至ってはさらに顕著に現れる。面倒だから、とか汚いから、とか理由は様々である。
 初夏としても掃除自体が好きというわけではない。かといって嫌いというわけではない。でも彼女はこの時間が好きだった。静かだからということもあるけれど、何よりも普通に触れていられるようだからだ。
 教室に残る人の残滓。ふと顔を上げて窓の外に目を向ければ優雅に、そして楽しそうに帰路へつく女の子たちの姿。
 普通だ。実に普通だった。
 この時間だけは、望んでいた普通の生活が簡単に手に入る。それが一人だけで、ただの自己満足だとしても尊い時間だ。本当に。

(これであらかた終了。仕上げの塵取りも完了。黒板、机、窓拭きも大丈夫。後は……ごみ捨てか……)

 悲観するつもりはまったく無い。だが、簡単に日常から崩れ落ちてしまう世界に浸かっている以上、こんな時間があってもいいじゃないか。そう思っていると、余計に普通の世界が、普通の世界に生きる人たちが愛しく見えてくる。そう思えれば、戦って守りたいと思えてくる。日常を。

「――しょ……っ」

 一日の不要物が詰め込まれて少々重みを増したゴミ箱を持ち上げると、その重さに軽く振り回されながらゴミ捨て場へと向かう。
 廊下を歩くとリノリウムを蹴る音が響く。それ以外に音が聞こえないということは、初夏以外の生徒は皆掃除を終えて帰宅したのだろう。初夏と違い多人数でやっているのだ、早くて当然だ。
 一人でやるという事態を招いてしまったのは自分自身だ。戦い同様文句を言うつもりは無い。

(一人……友達……か……)

 一人でいようとした自分。周りがうらやましいと思うことなどなかった。一人でいることが一番落ち着いたし、それ以上は望むことなどなかった。でも、胸に空いた穴は閉じることなく大きくなり、いずれは自らを失ってしまっただろう。
 大切だと思う人がいる自分。弱くなった。一人で要られなくなった。おかえりといってくれる存在がどれだけ温かいかを知った。でも、気がつけば嬉しくなっている自分に気づいた。
 戦いとは違うのに、もう一人には戻れない。しかし戻ろうとも思わない。

(戻りたく……ないわよね……)

 そう、戻りたくない。一人には。
 耐えられないと思う。友達の笑顔を見られないことが、ただいまといえないことが、おかえりといってもらえないことが。
 またね。
 そんな言葉を嬉しくて寂しいと思いたいから。

(……ごみ、捨てないと、ね)

 だから、早く帰ろうと思った。
 きっとお腹をすかせて待っているだろう、血のつながっていない、しかしそれ以上に大切な家族の顔を見るために。
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