妄想00
【妄想→現実←グロテスク】
〇校生である梨沙子――彼女は誰にも言えない秘密を持っていた。ことあるごとに、グロテスクな妄想をしてしまうという秘密を。
そんなリョナラー女子が誘拐されて殺されるだけの小説です
ほんとに殺されるだけを書いてるだけです。特にこう奇をてらったりしてません。ひどいです。


≪本文サンプル≫

 やたら早足で、やや太ったスーツ姿のOLらしき女性が、梨沙子を追い抜かしてゆく。シャンプーの香りか香水の香りか…強い匂いが鼻をくすぐった。
 OLと梨沙子、二人のすぐそばの車道を、ぎしぎしと軋み、左右に揺れながら、やたらにゆっくりと小型トラックが近づいてきた。
 梨沙子は横目でこれを見る。
 小型トラックは、重そうな、黒色に鈍く光る鉄板を何枚も積んでいる。鉄板は、何本ものワイヤーで括られてはいるが、やたら不安定に見える。

 ――梨沙子の脇を、鉄板を積んだ小型トラックが通り過ぎてゆく。そして、数メートル先の、OLの横に差し掛かった瞬間。
 悪路ゆえに大きくトラックが揺れ、積み荷も跳ねた。そして…
 鉄板を括っていたワイヤーが千切れた。
 ガウン! と音を立てて、たわんだ鉄板がトラックの荷台から崩れて、OLへと襲いかかる。
 OLの表情は死角になっていて見えなかったはずなのに、驚愕に歪んだことが梨沙子にはわかる。
 あたりが血の臭いに染まる。
 OLのシャンプーの匂いも一瞬にして掻き消された。
 崩れ落ちた鉄板が、OLの腹を両断していた。
 切り離された下半身は、鉄板の下敷きになったようだ。その下に肉体の一部があるほどに思えないほどに、鉄板と床の距離は近かった。潰れているのだ。
 上半身はと言えば、まるでそこにひょいと置かれた悪趣味なオブジェのように、鉄板の真ん中に据え付けられていた。その周囲を飾るかのように、腹圧から開放されて弾け飛んだ色鮮やかな内臓と、それに絡みつく薄黄色の脂肪が、黒い鉄の上に飛散していた。
 OLの顔は絶望すら読み取れないほどに虚ろだ。物言いたげに腕を僅かに動かし、口をパクパクとさせる。
 だがそれも、すぐに消える。
 死んだのだ――

 ――気がつけばトラックはとうに走り去っており、OLも近くの建物にでも入ったのか、それとも早足で去ったのか、もういない。
 無人になった道を、梨沙子は一人立ち尽くしていたのだった。
 ……まただ。またやってしまった。
 梨沙子は歩き出す。
                            
「ぎィう!?」
 梨沙子は奇妙な声を上げた。乳房の内部に激痛が走る。
「はは! おもしれぇじゃん!」
 黒Tシャツは、手に持った長い釘を、乳房の傷口にねじ込んできたのだ。ずれた眼鏡の向こうの滲んだ景色は、信じられない光景だった。自分の乳房から、所々がオレンジ色に変色した黒い釘が突き刺さっていた。自分の乳房から釘が生えている。信じられない。信じたくない。
「あ……、あぁ……」
 無理矢理に胸の内部にねじ込まれる釘。しかも無遠慮に、男はもう一本を乳房の傷口に当てた。
「うあがッ!?」
 二本目の釘を押し込まれて、悲鳴を上げて仰け反る。眼鏡が鼻の上で跳ねて、見開いた目に映る視界が再びぶれる。
「あぐ、ぅ…、ふー……ッぃあぁ!!」
 三本目。四本目。無遠慮に乳房の脂肪を引き裂いてねじ込まれる釘。
 大きく仰け反ったことで、スモークの貼られた窓が視界に入る。空と、街路樹には見えない、尖った木々の先端が連なっている。もう森の中に入っていたのだ。今の梨沙子の状況に似つかわしくないような、晴れきった青空の下に立ち並ぶ木々が車の移動に伴って流れてゆくのを、どこか他人事のように受け止める。
「っ………、ふぅ……く、……」
 ぐびりと梨沙子の喉が動く。首元まで流れ落ちていた涙の雫が踊った。悲鳴を上げて暴れることは梨沙子にはできなかった。声を上げる、ということすら恐ろしかった。余計に面白がってより傷をつけてくるかもしれない。
 それに、叫んで無駄に体力を消耗したら、万が一の望みすら絶たれるかもしれないのだ。
 ……いや、何を期待しているのだろう、助けなんか来るはずはないだろうに? 冷静な自分が、どこからか、冷酷に自分に告げてくる。だけど、もし、もしかしたら、山にだって人は来るかもしれない。深夜ですらない、まだ早朝なのだ。何かの用事で人が通りかかる可能性だって……。
「っつぁああ!!」
 思考は自分の悲鳴で中断させられた。胸の先端に、細い釘が突き立てられようとしていた。そして力を込められて、ぐいぐいとねじ込まれようとしていた。

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