yukisiroユキシロエピソード【手向けの花は空へと舞い散る】

ユキシロはテンコのシナリオにでてくる狐のアヤカシの男です。
本編で語られずに没になりそうなので、載せておきます。

テンコシナリオをプレイした後に読んでいただけると
内容を把握しやすいかもしれません。

■人物紹介

ユキシロ:狐のアヤカシ、聡明英知でずる賢いけど家族愛は人一倍ある。
ネネ:猫のアヤカシ、明朗快活で元気いっぱい、兄を慕っている、血の繋がりはない。

サトリ:アヤカシの長、金色狐のアヤカシ。沈着冷静、何事にも動じず、感情論では動かない為、非情にもなれる。

ユキシロにはネネという大事な義妹がいる。

両親は早々に他界してしまい
兄妹揃って辛くとも、何とかここまで生きてきた。

これからも二人で仲良く協力して生きていこうと、そう思っていた。

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■エピソード【手向けの花は空へと舞い散る】

最初は…ただの風邪やろうなと思っとった

だが、日が経てば経つほど…ネネの病状は悪化を辿る

ネネ「大丈夫やって」
ユキシロ「あかん、大人しくしとれ」

作物も不作が続き、まともに栄養が取れていない
ここには病気を治す薬もないし、薬を買う金すらなかった

もはや、自分ではどうにも出来ない

アヤカシの長、サトリ様に頼るしかなかったのだ

ユキシロ「サトリ様、どうか…」
サトリ「苦しいのは皆も同じ、優遇は出来ません」

ユキシロは必死に懇願し、頭を地に擦りつけ、土下座する

ユキシロ「そこを何とか…!」
サトリ「お話は以上です、お帰り下さい」

どんなに懇願しても、サトリ様が頭を縦に振ることはなかった

サトリ様の付き人達に追い出される

ユキシロ「何や…偉ぶってるだけのお偉いさんが!」

お前らが何もせーへんから、里が貧しくなっていくんや!

心の中で悪態をつき、家へと戻る

ネネ「お帰り~、晩ご飯、何にするん?」

ユキシロ「あかんって言うてるやろ、飯くらい俺が作ったる」

ネネ「ごほ…ごほ…ごめん、にいちゃん」

ユキシロ「何で謝るんや…謝る必要なんかありゃせんわ」

ネネ「あはは…にいちゃん、めっちゃ優しくなっとる」

ユキシロ「アホ、俺は元から優しさの塊や」

そんな他愛のない会話をする、ただそれだけで良かった

ーーだが、ネネの病状は刻一刻と悪化してく

肺がやられ、吐血した

あんなに元気だったネネが…今はずっと床におる
気を遣って無理に笑う、そんな姿を…もう見とれんかった

ユキシロ「もうあかん…このままやったら、ネネは…!!」

サトリ「どこへ行くおつもりですか?」

里を出ようと荷物を背負い、里の出口へと向かっていた

ユキシロ「いったん里を出る…”ここ”ではもう無理や」
サトリ「なりません」
ユキシロ「なんでやっ!?」

サトリ「里の外へ出れば、人間達との火種になりかねません」

里の外へ出られないよう、見張りが厳重に警戒をしている

サトリ「言ったはずです、苦しいのは皆も同じだと」

サトリ「人とアヤカシの均衡を保つのが私の役目です」
      「貴方一人の勝手は許しません」

ユキシロ「せやったら…ネネだけでも外へ!」

サトリ「ネネさんも同じ事です、許可できません」

ユキシロ「な、なんや…それ」
ユキシロ「なら、ネネを見殺しにせぇって言うんか!?」

サトリ「見殺しではありません、それは自然の淘汰です」

ユキシロ「!!」

ユキシロ「淘汰やとっ!?」

サトリに飛び掛る前に、付き人達に捕らえられ、押さえ込まれる

サトリ「こんな事をしている場合ですか?」

サトリ「この残された時間、ネネさんの傍にいてあげなさい」

ユキシロは里を出ることも許されず、サトリの監視下の元、暮らしていくしかなかった

苦渋し、家へと帰ると……玄関でネネが倒れていた

ネネ「にい、ちゃん…」
ユキシロ「ネネ……?ネネっ!!」

そんな姿にたまらず駆け寄り、抱き起こす

すると耳元で、かすかな声で…ネネが語りかける

ネネ「ずっと…言いたかった」

ネネ「にいちゃん…ごめん…」

ネネ「ずっと…迷惑掛けて…」

ユキシロ「迷惑なんかあらへん!ちょっと待っとれ、今医者に…!」

ネネ「……」

ユキシロ「ネネ…?」

支えていた腕に重みが増す

ユキシロ「ネネ、ネネっ!!しっかりせーや!!」

いくら名を呼んでも、ネネは返事をしない

ユキシロ「嘘やろ…こんなん嘘に決まっとる!!」

ユキシロ「ネネ、返事せぇっ…頼むっ…頼むから返事せぇやぁっ!!」

ユキシロ「ネネーーーーー!!」

絶叫が空しく木霊する

どんなに懇願しても、どんなに願っても…
ーーネネが目覚める事はなかった

涙が流れ、溢れ、何度も滴り落ちる

ユキシロ「なんや、これ…」
ユキシロ「どないなっとんねん……」

あまりの怒りと喪失に体の振るえが止まらない

ユキシロ「ネネ…」

自分の心がどす黒く染まっていく

ユキシロ「このままでは済まさへん…」

暗い炎が燃え滾り、熱く焦がす

ユキシロ「復讐や」

ユキシロ「何もせーへんかった奴らに…ネネの苦しみをわからせる」

ユキシロ「……この”苦しみ”、味わわせたるわ」

手向けの花が風に舞い、空へと舞った
その空はどんよりと曇り、光が差し込む隙間はない

ユキシロは復讐の道を歩み始める
復讐の闇に捕らわれた心には、もう光は届かない……


ユキシロエピソード
「手向けの花は空へ舞い散る」END