しかしこのままでは仕事にならない。身体の熱は鬼灯の理性を侵食するほどに高まり、外見も白皙の美貌を艶めかしく紅く染めている。
執務室でさきほどあれだけ無体を働いたというのに、鬼灯にとっては仕事場は神聖な場所だ。鍵をかけて再びここでいそしむこともできるが、後ろめたい気分がする。
かといって、自室に戻るほどの時間的余裕もない。
鬼灯は熱くてフラフラする身体を動かし、執務室を後にして、厠へと向かった。

個室のドアを閉め、鬼灯は下半身を覆っているものをすべて取り去り、壁のフックにかけた。
下半身が裸になった鬼灯は黒い着流しの裾を大胆にまくり上げ、白い下半身を晒し、便座に腰かけてため息を吐いた。

(こんなことをしている場合ではないのに・・・)

しかし身体で高ぶっている熱は留まるところを知らず、鬼灯は欲望のままそそり立った己の雄をおずおずと握りにかかった。

「っ・・・・・!」

手で少し握っただけで涎がでそうなほどの快感が走る。
このまま上下運動をしてしまったら、声が出てしまうかもしれない。
鬼灯は着流しの襟を口で噛み締めて、嬌声がでるのを必死に抑えにかかった。

握っていた右手を下から上へと滑らせるだけで、背筋が伸び、ゾクゾクとしたたまらない快感が体を駆け巡る。

(たったこれだけで、こんなに感じるのかっ・・・!)

今日一日で一番発情しているとはいえ、この感じ方は異常すぎた。

視線を下に向けると、反応しきった自らの雄が見える。
欲に勝てない身体を忌々しく思いながら、鬼灯は自身に白い手を添えた。

「っ・・・!」

少し触れただけで身体が縦にビクリと跳ねるほどに感じ、鬼灯は焦る。

(こんなに感じるなんて、おかしいです・・・でも、やらないと収まらない・・・)

鬼灯は着物の襟を歯で咥え、声をおさえられるようにすると、再び下半身へと挑んでゆく。

「んんっ・・・!」

やはり、少し触れただけでもひどく感じる。しかし猛を収めなければ厠から出ることもできず、鬼灯は決心して根元に手を添え、上下に擦り始めた。

「うぅっ・・・!んっ・・・!んんっ・・・!」

咥えた襟の隙間から、悩まし気な声が漏れる。
厠の個室でこんな声をあげていては、何をしているのか一目瞭然だ。しかし、声を完全に抑えられるほど、この快感は生易しくはなく、鬼灯は体を何度も縦に跳ね上がらせながら、自らで慰める快感に身もだえていた。

(声・・・押さえないと・・・でも、感じすぎて・・・っ!)

自身の先端からは透明な淫液が零れ、擦る手に塗されて摩擦の感覚をさらに潤滑にしてゆく。
ぬめりを帯びた掌の感覚は、今の鬼灯には毒ともいえるほどに甘美で熱く、鬼灯の理性を一瞬吹き飛ばすほどだった。

「あっ・・・!」

不意に出てしまった声に気づき、すぐに襟を咥える。
今の声は誰かに聞かれただろうか。羞恥心が急に高まり、快楽の高鳴りと焦りの高まりで心臓の音が耳にまでドクドクと響いてくる。

こんな場所で自慰をすること自体が非常識で、さらに声まであげてしまうなど、断じて許された行為ではない。しかし頭ではわかっているのに、熱いその箇所に刺激を受けると、理性はたちまち蕩けた。

厠に入って欲を発散しようとしたのが間違いだった。こんなに感じてしまうと知っていたら自室にこもってしていたものを、このような公共の場ではろくに感じることもできない。
誰かにばれないかというギリギリの羞恥の中で、声を押さえようとすればするほど体は熱くなって余計に感じ、鬼灯を欲情させる一滴になってしまう。

それなのに、もう気持ちよすぎて手で擦るのを止められない。
控えめな動きだが、先走りをふんだんに零し、粘液まみれになった右手はますます滑りを良くし、鬼灯に容赦なく快楽を送り込んでゆく。
口で襟を咥えているので鼻で必死に息をするが、ふうふう、という荒い吐息だけは押さえられない。
荒れ一つない美しく長い手指が汚れた色のない雄を擦り、脳天まで突き上げる快感が沸き上がって、それに反応してビクビクと身体が震える。
快感をこらえて声を止めなければならないという背徳感も手伝って、手の動きを速められない分、動きは緩慢になるが、それがまた焦れったく、その結果長く快感を感じてしまうことになってしまっていた。

(と、とっとと終わらせて・・・出て行かないと・・・長くいると、怪しまれる・・・!)

先ほどから、厠を出入りする足音が聞こえている。人の気配をドア一つ挟んで感じながら、鬼灯は必死に快楽の渦に抗いながら絶頂を迎えようと必死に快楽を貪るという、正反対の状態に陥っていた。

「んっ・・・ふ・・・ぅぅ・・・」

弱弱しく艶めいた吐息が漏れ、鬼灯は表情を官能的に歪ませる。
少しづつだが、快感が高まってきて、絶頂に手が届くようにまで迫っていた。
ここで思う存分かきむしることができればどれだけの悦を得られるだろうか、と思うとはやる気持ちが手の動きを速めるが、快感が高まると声を押さえられなくなってしまう。

(んんっ・・・極め、そう、だ・・・もう少し・・・)

ごくんと生唾を飲み込み、すぐにでも絶頂したい快楽をこらえながら擦る手は緩やかに動かしてゆく。
しかし感極まった体は暴走し、鬼灯の吐く息は荒く、一瞬強く感じた途端に咥えていた襟を離してしまった。

「あぁっ・・・・!」

首をのけぞらせて愉悦に浸り、いましがた自分が嬌声を放ったことなど気づかず、鬼灯は快楽を貪る。
もう理性の力ではどうしようもないほどに体中がよがり狂っていた。

そしてその直後、目をつぶって感じ入っていた鬼灯の瞼に、光がかぶさるのを感じた。

「鬼灯様・・・?」

ドアを開けられ、光が入り込んだ個室には、便座に座って足を開き、自慰にいそしんでいる美しい鬼の姿があった。