GASSASSIN 2 外伝

こうひー 著

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 「こらぁー!カイン!待ちなさ~い!」
 「へへーんだ!待たないよ~~!ケツでかエミリ~!!」

 「やれやれ・・・またやってんのねぇ・・・」
 メリッサは山盛りにニンニクの入った籠を傍らに置くと、汗をぬぐいながら、農作業にいそしむ村人たちの間を走り回る少年と、それを追いかける少女の様子を眺めていた。
 10歳かそこらの少年は、一回りは体格の違う年上の少女が息を切らせて追ってくるのを
明らかに楽しんでいるようであった。
 少女は額に汗を光らせながらもなんとか少年を捕まえると、その肩を両手で掴みながら腰をかがめて少年と目線を合わせた。
 質素なスカートに包まれた形のよい尻が後方に突き出されると、近くで作業をしていた村の若者が思わず視線を向ける。
 そんな視線は気にも留めずに、エミリーはカインの目を見ながら語りかけた。
 「はぁはぁ・・・カイン、はぁ・・・謝りなさい!」
 「ん?何を謝るって?」
 「何って・・・さっき私の・・・その・・・・・・」
 「何だよ、はっきり言えよ」
 ニヤつくカインに、エミリーはかすかに赤らめた頬で唇を噛むと、意を決して言った。
 「私の、お、お尻に、触ったでしょう!?」
 「いや~悪い悪い、姉ちゃんの尻があんまりデカいんで失敗しちゃってさぁ」
 「なっ・・・・・!?」
 乙女の尻を撫でておいて悪びれもしないカインに、エミリーが呆気にとられていると、
カインはかまわずトコトコと彼女の後ろへ歩いていく。
 「今度は失敗しねぇから・・・・・・・・さッ!!」
 カインの日に焼けた腕が翻ると、ぶわぁぁっと彼女のスカートは翻り、幸運な村の若者は美しい造形をもつ、魅惑的な肉の塊を目の当たりにした。
 「・・・・・・・・・っこらぁ~~~~~~~~~~!!」
 下着の白、素肌の白――――
春先の太陽のような、淡く眩しい光景に呆然とする若者を差し置いて、エミリーとカインは、この日12回目の追いかけっこに興じるのであった。

 「・・・すっかり眠っちまったようだね」
 「疲れたのよ。今日はさんざん遊ばされたもの」

 夕暮れ時、エミリーはすっかり眠りこけたカインを背中に背負い、メリッサとともに帰路についていた。
 「それにしても、この子はあんたに随分と懐いてるねぇ」
 「ええ・・・お互い早くに両親を亡くした身だから・・・」
 慈愛に満ちた表情で語るエミリーに、メリッサは遠慮がちに呟いた。

 「今日・・・分かってるわね?」
 「・・・うん」
 エミリーの表情から、慈愛の色は消えて、かわって強く冷酷な光が目に宿った。
義務を、果たさねばならない。この村の乙女として。
 それに報酬が手に入ったら、背中で眠る少年を自分が育てていこうと決めていた。



 夜も随分と深まった頃、カインは目を覚ました。
ふと隣のベッドを見ると、いつも安らかに寝息を立てているエミリーがいない。
 不安を覚えてベッドに潜りなおすには、その日の月は明るすぎた。
 夕方前からたっぷりと睡眠をとっていた彼は、その輝きに誘われるように家の外へと出て行った。
 持ち前のイタズラ心と少年特有の冒険心は、いつしか彼を村はずれの廃墟へと押し進めていた。
 昼間に来ようとしても、いつもエミリー姉ちゃんや、おっかねぇメリッサ姐さんに連れ戻されてしまう謎の場所であったが、今この時間に彼を咎めるものはなにもない。
 その開放感からか、廃墟の床から漏れる怪しい光を見たときも、嫌な予感の類など微塵も感じずに、少年は床についた取っ手に手を伸ばすのであった。


「終わったのね・・・」
キャシーとアリアが薄暗い地下道に目を向けると、エミリーとメリッサは音も無く現れた。
 メリッサはカラスのようなマスクを身に付けており、エミリーの厚ぼったくて黄色いスカートが揺れ動くたびに、辺りには硫黄を煮詰めたような悪臭が漂っていた。
彼女らがキャシーとアリアのいる部屋まで戻ってきたとき、すでに二人もマスクを身に付けて、エミリーのために代えのローブを用意しているところだった。



 エミリーが肌にまとわりつく悪臭を薬草の煮出し汁ですっかり拭き清め、代えのローブに身を包んだ時であった。
 突然、地下室の入り口が動いた。
 この時間、ここを訪ねてくるものは居ないはずだ。
 思わず身構える4人の前に現れたのは、年端も行かない少年であった。
 「あれ・・・エミリー?」
 「か、カイン・・・どう・・・して・・・?」



 面と向かって叱られたわけではない。
 メリッサ姐さんに引っ張られて、部屋の真ん中の小さないすに座らされただけだ。
それでもこんな夜中に家を抜け出して出歩いていた負い目がある。
 小さな椅子に腰掛けて、落ち着き無く辺りを見回す少年をよそに、4人の女性たちは
密談していた。
 「わかってるね、掟は・・・掟だよ」
 「でも・・・あの子はまだ・・・小さいのに・・・」
 「気持ちは分かるわ、でも・・・ダメなの。こらえて頂戴、ね」
 「あなたはもう帰ったほうがいいわ、エミリー。ゆっくり眠って、何もかも忘れるの」

 「ううん・・・私が、やるわ。私にやらせて・・・」
 「エミリー・・・・・・」
 「わかったよ、あんたが・・・送ってやりな」



 ふとカインが顔を上げると、自分の周りにアリアとキャシー、そしてエミリーが立っていた。
 みんな通気性のよさそうな、簡単なローブに身を包んでいる。
 ふんわり。 
「?」
ふと自分の後頭部に、柔らかいものを押し当てられた感覚を覚えた。
振り向こうとしたカインの肩を、エミリーが強く掴んだ。
「!・・・エミリー・・姉ちゃん・・・?」
「カイン・・・じっとして目を閉じていて、何も怖くないのよ・・・ね?」
 「・・・・?うん」
 少年は、言われるままに目を閉じた。これが苦しみの幕開けとも知らずに・・・。



 ふぁさ ぎゅ ぎゅうううう

「んぅ!?」
 顔に柔らかいものが押し付けられたかと思うと、前と両斜め後ろの3方から強烈な圧迫感を感じた。
 カインは必死に暴れたが、圧迫はその場からピクリとも動けなくなるほど強いものであった。
それでも痛みを感じないのは、顔に当るものが信じられないほどに柔らかく、弾力があったから。またそれは暖かく、かすかに懐かしい匂いがしていた。
やがてカインはそれが何であるかわかってきた。これは・・・尻だ!
女の尻・・・エミリー姉ちゃんの・・・でっかい尻・・・。



ブゥゥゥゥゥゥッ
低い音がして、顔面が揺れた感じがした。温もりを帯びた振動のあと・・・・・・
不意に強烈な臭気がカインを襲った。
「はんむっ!?んふんんんんんぅ!!!!????」
(臭い!!・・・ニンニクのニオイ?・・違う!お、おなら!?)
思わず立ち上がろうとするが、3つの尻は押さえつけるように彼を閉じ込めた。 
 「お願い・・・大人しくして」
「ごめん・・・ごめんね」
キャシーやアリアの声が、頭の上のほうから聞こえた。
いつもの、ニンニクを吊るしながら談笑する時の様な楽しそうな声じゃなく、感情を押し殺したような冷たい声だった。
「ああ・・・カイン・・・カイン!」
エミリーは悲痛な呟きを漏らしながらも、圧迫を緩めることなくさらに放屁した。
ぷぅ ブウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ
 「んんわ!?はっぷぅ!あ゛ぷぅぅ!!」
いよいよもって彼は渾身の力で暴れ始めたが、日ごろの野良仕事で鍛えられ、さらに特別な食事を与えられた娘たちの強靭な足腰は、哀れな少年を柔尻の牢獄に閉じ込め続けていた。
ブズビゥゥィィィ
今度は右の耳の辺りから音が聞こえた。ほどなくして眩暈を起こしそうな強烈な臭気が
彼を責めたてた。
 「んぐがぐ!ふんんんぅ!!!!」
 カインの涙がエミリーのローブを濡らしても、尻の圧迫は緩まらなかった。
 ブウゥゥゥゥゥン
 続いて左の耳の裏のあたりから、低い音と重い臭いが彼を苦しめる・・・・・・。
 「んっあぅ!ふがああああああああああ!!」
 カインの嗚咽が部屋の空気をいくら揺らそうと、放屁の嵐は彼を嬲り続けた。


 ぷぶぅ・・・・ぶううう・・・ぷすう
 ぶぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~う プゥッ ボプゥゥゥゥゥッ
ブッ ぷしゅううううう ぷす・・・ぷすすす  ぷぅぅぅぅぅぅぅ~~~~



カインの暴れる動きがやがて静かになり、放屁のたびに走る痙攣のようになったとき、ばたつく腕は前方をまさぐり出していた。
それがやがてエミリーの肢体に抱きつくように絡みついたとき、彼女は思わず、かすかに圧迫を緩めていた。
カインは初めて、哀願を口にすることが出来た。

「ぷはっ・・・!姉ちゃん、エミリー姉ちゃん・・・臭いよう、臭いよう・・・」

エミリーは一瞬ハッとなったが、すぐに後ろでにカインの腕を掴むと、ぎこちない動きで、彼をゆっくりと、柔らかき尻の処刑台へと押し戻していった。
「エミリー姉ちゃん、臭い・・むぐ・・・ふはいよぅ・・・・・もう、やめへぇ」
カインはエミリーの尻に顔を埋めたまま、尚も哀願していた。

「カイン・・・ごめんね。見られたからには・・こうするしか、ないの。
でも、安心して・・・きっとお姉ちゃんが、あなたのお父さんやお母さんが待っているところに、あなたを送って・・・あげ・・・っ」
 それ以上は、言葉にすることは出来なかった。
 エミリーがそっと後ろに目配せすると、キャシーもアリアも尻を突き出して、カインの小さな頭を、エミリーの豊満な尻へとめり込ませた。
 
 (出して・・・もう臭いおならを嗅がせないで・・・!!)
 ローブの裾をぎゅっと握るカインの手は、必死にそう訴えかけているように思えた。
だがそれでも、エミリーはその手に優しく自分の手を添えて押さえると、
 ぷふぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・・・
なおも哀れな少年の鼻腔を自らの屁の臭いで侵し続けた。



 (臭い・・よぉ・・・何でこんな事するんだろう・・・・・・。
 姉ちゃん・・・怒ってるのかなぁ・・・?
 何か言ってたけど・・何だろう?・・・もう何も聞こえないや・・・
 臭くって、アタマ・・・ぼうっとする・・・このまま死んじゃうのかな・・・?
 でも何だろ・・・怖くないや・・・姉ちゃんのお尻で死んでいくのなら・・・おいら・・・
・・・あ・・・ぁ・・・姉ちゃんのおなら・・・臭い・・・なぁ・・・・)



もはやカインは何の抵抗もせず、かすかに残った力でエミリーの尻にすがっているようだった。放屁の激臭に翻弄された呼吸は浅いままであったが、いつしか小さく静かなものになっていた。



「ごめんね・・・おやすみ、カイン」
プッ プゥゥゥウゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・
・ ・・・・・・・・ッ・・・・・・
 この世のものならぬ屁臭の子守唄は、少年を二度と目覚めぬ眠りへと沈めつつあった。
 カインはエミリーにすがっていた腕を痙攣させ、いびつな木の枝のようにピーンと張ると、そのまま動かなくなった。
 ようやくにして圧迫を解かれた彼の体は、まず腕からダランと垂れ下がると、虚ろに半開きな瞳のまま前方へと倒れこんだ。
 「カイン・・・ごめんね、ごめん・・・・・・」
エミリーは彼を抱きとめて、静かに泣いた。
ともに処刑に携わった2人の乙女も、一部始終を監督していたメリッサも、ただ黙って見守ることしか出来なかった。



「カイン・・・・うう・・・ぐすっ・・・・・・」
エミリーが泣き続ける傍らで、メリッサは他の二人を帰した。あとは自分が何とかするから、と。
二人を見送って地下室に戻ったとき、彼女はカインの亡骸を胸に抱き、メリッサを見上げて言った。
「メリッサ・・・お願い。このまま・・・・・・」






「ただいま。いい子にしてた?」
「・・・・・・・・」
遠く離れた土地のある質素な家のなかで、エミリーは虚ろな目で一人、外を眺めていたカインに微笑みかけていた。
エミリーたちの屁臭の凄まじさに「壊れて」しまった彼は、もはや口を封じられたようなものであった。
いつか彼の心が元通りになった時、ニンニクの村で遭遇した恐ろしい事件のことを思い出さないとは限らなかったが、その時は自分が彼を葬る。
そう言って、エミリーは自分がカインの亡骸とともに、彼の魂を弔うべく旅立ったことにしてくれるよう、メリッサに懇願したのであった。
メリッサがどこまで、自分のことを信用してくれたかは分からない。
だが、二度と村に近づかないことを条件に、彼女は村はずれに馬車を手配してくれた。
あの日、カインの口を封じる前に、吸血鬼とされた男を屁臭の中に葬った。
その時、教会から前金で受け取った「報酬」がある、2人が当面、食べていけるだけの貯えは持っていた。
いま2人は、人目を避けるようにして、この地で暮らしていた。



 「おなか空いたでしょ?いまご飯作るから、待っててね」
 「・・・・・・ん・・・」
 カインが虚ろな目で自分を見上げる視線さえ、今のエミリーには愛おしかった。
少年の頭を撫でて、台所へ向かう彼女。
 (メリッサにはああ言ったけれど・・・)
 夕飯の支度をしながら、彼女は考えていた。
 (あの子の記憶が戻ったとき・・・出来るかしら、私に・・・?)



 「きゃっ!?」
 腰の辺りに不意に何かが押し付けられる感覚を感じ、考え事を中断するエミリー。
 見ればカインが後ろから抱き付いて彼女のふくよかな尻に顔を埋め、甘えていた。
 フゥ、と苦笑して耳のあたりを撫で下ろしてやると、彼はかすかに微笑みながら、エミリーを見上げた。
 「もう・・・いけない子・・・・・・」
エミリーが慈愛に満ちた目でカインを咎めると、その声はどこか押し殺したような、妖しい冷たさを感じさせた。
カインは一瞬怯えた眼をしたが、そんな思いを振り払うかのように、すぐにまた目の前の柔らかく巨大な肉塊に顔を埋めて、甘い香りの中に沈んでいった。



END