第五話前編 :SBD・著



「カイト・・・! カイト・・・!」


穴ぐらの中で座りこみ、うなだれるように一人うとうととしていたカイトは、何者かの呼ぶ声に気付いて振り返った。

「カイト無事か!?無事なんだな!」

「ハムサン、お・・おまえなのか・・!?」


入口の扉が、いつのまにか開かれていた。
その向こうから聞こえる懐かしい仲間の声に、カイトは思わず弾かれるように立ち上がっていた。
「ハムサン、こんなところで何してるんだ!死にたいのか!」

「馬鹿野郎!そいつはこっちのセリフだ!いいからさっさと来いっ!!」

そう言ってハムサンはカイトの腕を掴み、穴ぐらから引きずり出した。


ショットガンを構えたハムサンは、素っ裸で無防備なカイトを先導しつつ、生き物の体内めいた複雑に入り組んだ回廊を慎重に進んでいった。

「あの後・・・・あのナイルスネイルとお前の後を、こっそり尾けてみたのさ・・・」

ハムサンは、緊張した面持ちで辺りをうかがいながら、低い声で言った。

「すまん、カイト・・・。
お前があそこに閉じ込められているのがわかっていてみすみす、今の今まで手が出せなかった」

「わかってるさ・・。おまえは最高の相棒だ」

カイトは、目頭に熱いものを感じながら、同じように声を低めて言った。
ハムサンは、鋭い目つきのまま唇の端だけをきゅっと歪め、無理に笑顔をつくって言った。

「へへ・・・。だろ?」


二人は、曲がりくねって奇妙なでこぼこのある、洞窟というよりは虫の腹じみた通路を、暗がりから暗がり、物陰から物陰へと移動しつつ、ハムサンが侵入してきた外界への出口へと、着実に歩を進めていた。

「儀式の日・・・・連中は、そう言っていた。ちょうど今がその儀式とやらの真っ最中なんだろう。今のうちさ・・・」

「・・儀式?・・そういえば、ナプラマージャもそんなようなことを・・・・。なるほど・・・」

ナプラマージャという聞きなれない語に、ハムサンは一瞬首をかしげる仕草をしたが、また口の端をきゅっと歪めるようにして言った。

「それにしてもあのナイルスネイルは、妙な奴だったな・・」

ハムサンは、低い声で続けた。

「お前をここに連れ去った奴さ。
奴がお前の腹を殴ったあの時・・・俺はてっきり、お前は殺られたとばかり思ったが、違った。
あのナイルスネイルが、それからお前に何をしたと思う?カイト」

「・・・・ナプラマージャが・・俺が気絶している間・・・に・・・・?」

「奴は、お前にまずキスをして・・・とびきりのお熱いやつをな。
脅えながら見てた俺までもとろけそうになるような、濃厚なのをさ」

「な、な・・」

「それから、キスする場所が、だんだん下にさがっていった・・ 首から胸、胸から腹、それから腹の下、股間・・・・」

「・・・・」

「いくらも経たないうち、すぐにお前はぶちまけちまった。だが無理もないさ。気を失ってるとはいえ、あんな濃厚なのをくらっちゃあな・・。
ナイルスネイルは、飛び散ったお前のあれをきれいに舐め取った。あいつは笑っていた・・・・ううっ・・あの微笑みときたら!」

「・・・ハムサン、おまえ・・」

「頭から離れない・・・畜生・・・・・ 俺は・・・・・・・ちくしょう・・」

ハムサンは、指から血の気が失せて真っ白になるほど、ショットガンの銃身を固く握りしめていた。
その顔に何ともいえない苦悶と迷いの表情が浮かんでいるのを、カイトは見た。

「そうはいかない・・・・フッフッ、そうはいくもんか。
そうそう簡単にナイルスネイルどもに踊らされる俺かよ、なあカイト?
心までは絶対に屈しない。
・・・証拠が見たいか、カイト・・・?」


ハムサンが手招きした方へ歩み寄ったカイトは、墓穴のような凹みの底に横たわる女体を見て、ギクリとして立ちすくんだ。
窪地になった床の、赤黒い血だまりの中に倒れ伏している大柄な女性。
身につけている装身具は、たしかに地球人のものではない。ナイルスネイルだ。
しかしカイトは、何ともいわく言い難い気分の悪さを感じていた。

「ハムサン、こ、これは・・・・!?」

「仕留めてやったのさ」

ハムサンはショットガンを構えて言った。

「至近距離から心臓の辺りにありったけぶち込んでやった・・悲鳴も上げずに即死したぜ」

ナイルスネイルはうつぶせになっていたので弾痕は見えなかったが、凹みに溜まった大量の血が、彼女の受けた傷の深さを雄弁に物語っていた。
ナイルスネイルの血も赤いのか・・・と、カイトは一瞬、不思議な感傷にとらわれた。

「まあ、ラッキーだったってこともあるか・・・・
こいつはマヌケなヤツで、ショットガンが胸に押し当てられるまで、てんでボーっとしていて、俺に全然気付きもしなかったのさ。
ちょうど、ばかでっかい乳がサイレンサーがわりにもなったしな。
・・・・柔らけームネ、しやがって・・・・化け物のくせに・・・!」

ハムサンがそう言ってショットガンの銃口でナイルスネイルの後頭部を小突いた、その時だった。


バシッ・・!

打撃音と共に、ショットガンがハムサンの手を離れて宙を舞い、床に落ちた。
カイトの目には、その一部始終がスローモーションのように映っていた。


ゆらり・・・

ショットガンをなぎ払った腕を凹みの縁にかけ体重を支えると、赤い雫を滴らせながら、ナイルスネイルの上体が、ゆっくりと血だまりの中から起きあがった。

「ふぅぅぅ・・・・・」

ナイルスネイルは溜息をつくように、大きく物憂げな呼吸を繰り返した。
上目遣いにハムサンを睨んだ目が、ニヤリと笑った。

後退りしようとして足がもつれ、ハムサンは床に尻餅をついた。

「うそだろ・・」

ハムサンは目を剥き、口がOの字になっていた。

「死んだはずだ・・・胸に大穴開けてやったはず・・!」

「ふ、ふ・・・どこに?」

立ちあがったナイルスネイルはこれ見よがしに、ふっくらとまるい乳房を強調して言った。
確かに、胸部の装身具や布がメチャメチャに裂けてはいたが、その破れの向こうに見える薄い褐色の肌は、傷どころかシミ一つ見当たらなかった。


ピシャッ!

血だまりから引き上げられたナイルスネイルの足が、乾いた床の上で濡れた音を立てた。
鮮血にまみれてもなお美しいナイルスネイルの端正な足。
その時、カイトは見た。
生々しい血の赤が、その足にすぅっと染み込んで消えていくのを。

全身の肌からダイレクトに液体を吸収する、その能力。
いちいち物を咀嚼し消化する事で、やっと幾ばくかの栄養を吸収する事ができるようになる人間などとは、わけが違う。
エネルギー変換効率のみに着目してみても、圧倒的に優れているはず。
それがナイルスネイルの脅威的な運動能力、そしてカイトらが今回目のあたりにした恐るべき治癒能力を生み出しているのだ。

「ば、化け物・・・」

「口に気をつけなさい、ナプラマージャのペット」

ナイルスネイルは耳もいいらしい。
カイトのつぶやきを聞きとがめた彼女は、目を細めて言った。

「命ある限り覚えておくがいい。私は誇り高きナイルスネイルのディーバ・ル。
お前達人間の言葉で、豊穣なる者という意味よ!」

ディーバ・ルはそう言うなり、未だ申し訳程度に胸を覆っていた布の残骸を破り捨てた。
透き通るように美しい柔肌の、二つのふくらみが露わになった。

「ち・・」

カイトは我知らず、間の抜けた声を出していた。
血と言ったわけではない。ディーバ・ルの肌の上にはもはや、一片の血痕も見当たらなかった。
彼が思わず声を漏らしてしまったのは、彼女の乳首を目にした衝撃からだった。
本能を刺激する薄桃色をした花の蕾のようなそれは、全く地球人の女と変わりが無かった。
本当に、敵なのか?こんなにも美しいのに。
カイトの脳裏をそんな、訳のわからない口惜しさのような思いがよぎった。

半裸のディーバ・ルが、まぶしい程の愛らしい微笑みを浮かべ、両手を差し伸べて歩み寄ってくる。
まるで、愛しい男と再会した娘のように。
可憐にして妖艶としか言いようのないその迫力に、二人の男は一瞬、恐怖も何も忘れてただただそれを見つめている事しかできなかった。


「さぁ、お前。つかまえた。つかまえたよ」

ディーバ・ルは、地面に尻餅をついたままのハムサンを抱きしめ、のしかかるようにして地面に押し倒すと、優しくささやいた。

「お前だけは・・・さあ、どうしてやろうかしら。
人間ごときが、よくも儀式の邪魔をしてくれたわ。
おかげで私は、もう絶対に次期シ・ケーニョにはなれない。
種族全体とリンクする精神和合の儀式に乱れを生じさせた私が、選ばれることはもうないのよ・・」

微笑んだ顔のまま、ディーバ・ルの目がきりきりと、糸のように細められた。

「ナプラマージャ・・・これできっとあなたがシ・ケーニョに・・・」

「カイト!!逃げろ!逃げるんだぁぁっ」

呪縛から解けたように我に返ったハムサンは、カイトの方を向いて叫んだ。
その声に弾かれたように、カイトは脱兎のごとく走り出した。

「振り向くな、走れぇぇっ!!」

ふり絞るような叫びを背中に聞き、カイトの脳裏に、ハムサンとの訓練の日々がよぎった。
悪い冗談の好きだったあいつ。勇敢だったあいつ。死を賭して、救援に来てくれたあいつ・・・・・

カイトは足を止め、後ろを振り返ってしまった。


ひゅっ!

風のうなりのような音が聴こえたかと思うと、次の瞬間、カイトは地面に突き倒されていた。
胸を強く打って、肺に空気が入っていかない。
苦しみに見開かれたカイトの目に映ったのは、奇妙な動物だった。
二本の脚の上に乗った歪んだ胴体からは、ばたばたとねじれ動く腕が何本も生え・・・・

いや、違う。
よく見れば、ベアハッグの体勢でハムサンを抱え上げたディーバ・ルがそこに立っていたのだった。
ただ、両者の体があまりにぴったり密着していたのと、ハムサンの頭が見当たらなかったために、一個の生き物のように錯覚したのだ。
ハムサンの首から上は、ディーバ・ルの大きな二つの乳房の間にはさまれ、完全に埋まってしまっていた。
ハムサンは両手両足で何とかディーバ・ルを引き剥がそうと暴れるが、圧倒的な力の差の前になすすべもない。
そして、どんどんと息が詰まってきているのだろう、暴れ方が無茶になっているのがカイトには見て取れた。
そんな事には一向にお構いなしといった顔で、ディーバ・ルは、カイトを見下ろして言った。

「逃げられるとでも思ったのかしら?・・まあいい。今は殺さないでおくわ。
いずれ、ナプラマージャにもまた会わせてやる。その時まではね・・・・・」

ディーバ・ルはハムサンを抱えたまま、くるっとカイトに背を向けた。
不安と安堵が入り混じった表情でカイトが息をついたその時、彼の胸の上に、ディーバ・ルの尻が落ちてきた。

ボム!!

奇妙な柔らかさを持つこの建造物の床の構造とディーバ・ルの豊満な尻の脂肪でいくぶん衝撃が吸収されたとはいえ、カイトは再び、今度はもっと手酷く肺にダメージを受け、深刻な呼吸困難に見舞われていた。
二人ぶんの体重にモロにのしかかられたのだ。むしろ、肋骨が折れなかっただけ幸いだったとも言える。
ディーバ・ルはさらに、いったん尻を上げると、仰向けのカイトの股の上へと、優しく腰を下ろした。

ムニゥ・・ムニムニ・・

ディーバ・ルの尻肉は、波打つように動きながらカイトのペニスに吸いつき、尻割れの間にそれを運び、挟み込んだ。
ナイルスネイルだからできる、地球人には不可能な動きだった。
その動きの延長で、尻に挟みこまれたカイトのペニスは、ゆっくりと搾られ始めた。
えもいわれぬ尻の感触に裸の股間を刺激され、苦悶の中にあってなお堪らない快感に、カイトは声無き声を上げて身悶えた。

カイトの反応を見て満足げに微笑んだディーバ・ルは、ベアハッグを解いてハムサンの顔を胸の谷間から出してやった。

「ゲホ!ゲーホッ!ゲホッゲホ・・・」

ハムサンは、ゼイゼイと喉を鳴らし、咳き込むように息を吸い込んだ。
愉悦の眼差しでそれを見ていたディーバ・ルは、笑って言った。

「あらあら大丈夫?あっけなく殺しちゃうところだったわねぇ。
ダメよ。お前だけはね・・・楽はさせてやらない」

ディーバ・ルは、ハムサンの肩を捕まえていた手を彼の腰へ回すと、履いていた軍用の迷彩パンツを引きちぎれんばかりに引っ張り、力任せに脱がせてしまった。
突然の事にハムサンの上体はあっけなくひっくり返り、床に叩きつけられた。
すかさずディーバ・ルの腕がハムサンの両の太腿に絡み付き、自分の胴体をその間に挟ませる格好になるよう、彼の腰をさらに引き寄せた。
むき出しになったハムサンの股間を自分の胸にピッタリと引き寄せたディーバ・ルは、身をよじると、豊かな乳肉を全てハムサンの腰の上へと乗せた。

ハムサンはまるで彼女のテーブル代わりだった。
そしてカイトはまるで、彼女の椅子だ。
ディーバ・ルの尻はなおも淫らに波打ち、カイトの精を搾ろうとうごめいていた。

「う・・・お・・おお」

ようやく声の出るようになったカイトはうめいて、何とか起き上がろうとした。
目の前に、ハムサンの両足が突き出されていた。

「ハ・・ムサ・・ン、無・・事・・か!?」

「黙れ。動くな」

振り向いた肩越しにカイトの方を見据えて、ディーバ・ルが警告を発した。

「お前はまだ殺さないと言ったはずだ。私の気が変わらないよう、おとなしくしていることね。口で言ってもダメなら・・・」

ディーバ・ルは、サッと尻を上げた。

バリバリッ!

あっという間にディーバ・ルは、自分の尻から股間にかけてをピッチリと覆っていた布様の装身具を片手で破り捨てた。

露わになった生尻を、すかさず再びカイトの股間に下ろす。


ヌチャ・・!

「ひっ・・・!?」

ぬるりとした熱い粘液の感触に、思わずカイトは息を呑んだ。
愛液だ。ナイルスネイルの、愛液!
カイトはそう直感した。

ディーバ・ルの尻の筋肉が再び動き出し、カイトのペニスを誘導し始めた。
愛液に濡れそぼった、ナイルスネイルの会陰部へ。
それを悟ったカイトは、ハムサンの両足につかまり、必死に体を起こそうとした。
が、

「わ、あぅ!!」

カイトの上体は、もんどりうって再び床に叩きつけられた。
ディーバ・ルの陰唇が彼の亀頭を捕らえ、呑み込みはじめたのだった。
それを見てディーバ・ルは、くすくすと笑っていた。

「ほら、そんなに反抗したいのなら、してみなさいよ。・・どうしたの?私だって感じるのよ。
お前も戦士なら、もっと突いて、私をめちゃめちゃに乱れさせてみればいい。
仲間を、助けたいんでしょう?助かりたいんでしょう・・・?」

「あぅ、あぅ!あぅ!」

カイトは、脳が蕩けるような熱い快楽のうねりに翻弄され、全身を突っ張らせてがくがくと震えるだけだった。


ゴツッ!!

鈍い音がした。
カイトの方に目をそらしていたディーバ・ルの頭を掴んでの、ハムサンの頭突きが決まったのだ。

「うおお!!」

よろけたディーバ・ルにもう一撃叩き込もうと、すかさず頭突きを繰り出すハムサン。
しかしもともと無理のある体勢だったため、スッと首を後ろに引かれ、今度は簡単にかわされてしまった。

ディーバ・ルの顔から微笑みが消えた。
代りに、凄艶とでも呼べばよいのだろうか、名状しがたい雌の表情がそこに浮かんだ。

「ち・・く・・しょぉおおお!!」

ハムサンは、破れかぶれの拳骨を振りかざした。
鼻っ柱を狙ったつもりだったがまたもかわされ、拳は結局、ディーバ・ルの巨大な乳房の上に深々とめり込んで止まった。


「・・・お前、なかなか面白いわね。
いいわ。さあ、それじゃご褒美の時間。
素敵なお仕置きをプレゼントしてあげようかしら?」

「な・・・あ!?く・・!あ・・!」

ハムサンは、自分のペニスが突然、強大な圧力で締め上げられ始めたのを感じた。
しかしディーバ・ルの両腕は依然として、彼の太腿を脇に抱え込んだままだ。手ではない。

「む、ムネ・・だと!?」

ハムサンは見た。
ディーバ・ルの二つの胸のふくらみが、まるで別の生き物のように自ら波打ち、妖しくうごめいているのを。
ハムサンの肉棒を両側から挟み込んで万力のごとく締め上げていたのは、彼女の巨大な乳房に他ならなかった。
総じて大柄な事や耳の形が多少尖っているのを除けば、見かけ、体つきはまるで地球人と変わり無く、妙齢の娘そのもの。
しかし、やはり異星人なのだ。ハムサンはそれを改めて思い知らされた。

睾丸を潰されそうなまでに圧搾され、痛みと恐怖に脂汗を流しながらも、ハムサンはぎらりとディーバ・ルを睨みつけ、言い放った。

「ぐ・・・く・・・貴様・・・俺を殺しても、人類は・・死なない・・!
いつの日か・・・貴様らナイルスネイルを打ち滅ぼす方法が・・・必ず・・!!
その日が来るのを・・・地獄で笑いながら待っているぜ・・・・貴様らの最期を・・!」

口の端をきゅっと歪めて無理に笑顔を作ると、ハムサンは静かに頭を垂れ目を閉じた。


「・・・・本当に面白い人間ね。でも、ちょっと大袈裟じゃない?
うふふふふ。アハハハハハ!
だって・・・私のお仕置きはまだ、始まってさえもいないのにね?」

ディーバ・ルがそう言ってハムサンの股間に顔を近づけると、乳房がふるふると動き、谷間からハムサンのペニスの先端が顔を出した。
乳肉が緩み、ペニスにかかっていた圧力が、マッサージのような優しく揉みしごく動きに変化した。



  続く