1匹目 ドブネズミのスヰミー          こうひー・著


「フゥ、やっと森にたどり着いたぜ。下水を出てから2ヶ月くらいか・・・長かったなー」
スヰミーはようやくにして移住の成功を確信することができました。
下水にいた仲間たちはみな散り散りになってしまいましたが、ここでも新しい仲間がみつかるさと探していると、やがてネズミの集落にたどり着くことが出来ました。

「やぁ、オイラはスヰミーってんだ。あっちの下水から来たんだ。ヨロシクな!!
・・・・・・な、何だよ?やけに暗いじゃねぇか。何があったんだ?」
「・・・バケモノ、だよ。最近このあたりにバケモノが出て、森の動物たちがたくさんやられてるらしいんだ。鳥たちの話によれば、そいつがこの村にも向かってるって話だ」
「マジか!?なんてこった・・・折角命からがら、引越しを敢行したってのに・・・・・・んで、そいつはどんなヤツなんだ?」
「詳しくは知らないが、どうも食う為に殺してるんじゃないらしいんだ。死体は残ってるらしい」
「そいつは・・・もしかしたらニンゲンっていう連中じゃないのか?それなら俺らみたいな小さい体の動物は・・・」
「いや、どうやらそうじゃないらしい。むしろ小さい動物のほうがやられてるくらいだ。・・・それで、その残されたエモノの死体ってのがやたら臭いんだそうだ」
「腐っても放置してるのか・・・ハイエナやハゲタカじゃないみたいだな」
「ああ、でもキツネやオオカミなんかも殺されてるっていう話だし、体の大きいヤツかも知れない。だからもうこの村を捨てて、みんなで逃げ出そうかと・・・」
「冗談じゃない!こちとら必死の思いでここまで来たんだ!・・・よし、俺に考えがあるぞ。相手がデカいヤツなら、こっちも・・・」

「来たぞ!まだ良く見えないけど、きっとアイツだ!!」
「よし!みんな行くぞ!アイツを追い返すんだ!!」


「うふふ・・・あそこにネズミの村があるのよね」
彼女はうきうきしながら歩を進めていきました。大きなシッポを揺らしながら、白黒で縞々の毛皮も心なしかツヤツヤと光っています。
「さっきの坊や、一気に仕留めないでジワジワ嬲ってよかったわぁ。おかげでこ~んないい場所教えてもらっちゃった♪あの子、リス・・・ううん、やっぱネズミだったっけ?ま、いっか。ああなったらもう関係ないよね。ふふっ」

その時、思い出し笑いを浮かべながら歩く彼女の目の前に、突然大きな影が現れました。
「な、何!?コイツ」
「チュウチュウチュウ・・・立ち去れ~立ち去れ~チュウチュウ」
(本当にコイツか?ヤマネコ程度の大きさしか無いぞ?オオカミを仕留められるようには見えないけど・・・)
(いや分からんぞ!?とにかく追い返すんだ!!)
「チュウチュウ・・・出て行け~早く出て行け~チュウチュウチュウ」

「何だか分からないけど・・・・・・」
彼女は不意に背を向けると、その大きなシッポをピーンと逆立てました。
そして影に向かってお尻を突き出したまま振り向きました。
「これでもくらえっ!」

プッシュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ゥ

「ギャヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
「臭いよぉ!臭いよぉ!!」
「な、は、ふ、ギャハーーーーーーーーーーーーっ!?」

彼女のオナラが立ち込めると同時に、無数の呻き声が上がって、大きな影はグニャグニャと揺れ動きました。
やがてその足元からバーッと何かが沢山走って逃げていきました。
それはネズミの群れでした。逃げれば逃げるほど、影は小さくなっていきます。
ネズミたちは固まって大きなシルエットを作り、彼女を脅かそうとしたのです。
でも彼女は臆することなく、その大きな影に向かって、得意の毒ガスを吹き付けたのでした。

そう、彼女はスカンク娘だったのです。

一発繰り出して影の正体を見破ると、彼女は考えました。
「こんな小賢しい事を考えるイケナイ子には、キツ~イお仕置きが必要ね」と。
やがて大きな影の頭が降りてくるにしたがって、それが巨大なネズミをかたどった物であるのに気が付きました。
その頭の部分も、「目」のネズミが転がり落ち、「耳」のネズミが逃げ出し、他のネズミたちも散り散りになると、「鼻」の部分に収まっていたネズミが足場を失って、彼女の前に落ちてきました。

「うぅ・・・いてぇ・・・くせぇ・・・何なんだ一体・・・ハッ!?」
「うふふ・・・どうやらあなたがリーダーね?『お鼻』ちゃん♪」
「うう・・・畜生、失敗か・・・」
「ふふっ、やっぱりお鼻に直接、トドメを刺さないと、ね」
「えっ?う、うわぁ!!」

落ちた衝撃と強烈なニオイで立ち上がることも出来なかったスヰミーの上に、スカンク特有の大きなお尻が降りてきました。
お尻の穴のあるあたりがフリフリと揺れながら、スヰミーをむぎゅうううっと仰向けに押さえつけたのでした。

「えっ ふぐっ ぅっ むぅぅ!!」
スヰミーは、今まで下水道の中で生きていても嗅いだ事の無いような強烈な臭さを感じてもがき苦しみました。
でも彼の体は、その何倍もあるスカンク娘のお尻の下でモゾモゾするばかり。逃げることなんか出来ませんでした。
「ふふふ、元気がいいわね。あんなこと思いついた貴方に、ご褒美あ・げ・る♪」

ぷぅぅっ

スカンク娘のお尻の、スヰミーを押さえつけたあたりから、黄色い煙がもわわんと立ち込めました。
スヰミーは全身が温かくなったのを感じて、次の瞬間、鼻先から臭~いニオイが注ぎ込まれたのを感じました。

「いぇぎゃおえう!ぼぼべ!!ぶぎょあ!!げええ!!えぅぅ!!!」
スヰミーはあまりの臭さに、体中が痺れていく様な苦しみを味わいました。
重くて柔らかくて暖かいスカンク娘のお尻の下で身動きもとれず、ただただ叫び散らしていました。
鼻の中だけに留まらず、喉の奥、まぶたの隙間、門歯の先・・・ありとあらゆるところからそのニオイが襲ってくるかのようです。
まるで体全体が鼻になって、スカンク娘のオナラを吸着させているかのようでした。
臭い臭い思いをしながら、スヰミーはスカンクのオナラのニオイ以外だんだんと何も分からなくなっていきました。

スヰミーは臭い臭い空気の中で、下水道でのことを思い出していました。
あそこの空気もこんなだったかなぁ。みんな何してるかなぁ。楽しかったなぁ・・・・・・。
臭くて堪らないはずなのに、スヰミーは何故か離れ離れになった仲間のところに行けるような気がしました。

「あらら、すっかり大人しくなっちゃったわね。そろそろおねむの時間かな?
ふふっ、いいわ。それじゃ・・・・・・オヤスミナサイ」

むっす ぷすすすすぅ~~~~・・・・・・・・・・・・・・・

ジュビュビュビュビュビュ・・・・・・・・

スヰミーの涎や鼻水、もしかすると他の体液などにオナラが染み付いたのでしょうか。
お尻とスヰミーの間から、黄色い泡が吹き出してきました。
もうスカンク娘がお尻をムニムニさせても、スヰミーはピクリとも動きませんでした。
スカンク娘は立ち上がって彼を見ると、少し笑ったような顔で泡まみれになって、もう息をしていませんでした。
ヒゲだけがヘナ~ッと力なく垂れ下がっていきました。
「ふぅ、残りの子たちはどこ行ったのかなぁ~?」
スカンク娘は辺りを見回すと、シッポをフリフリしながら何処かへ去っていきました。



スカンクは本来、外敵に襲われたときにだけオナラをして、それを撃退します。
だからこのスカンク娘のように、相手を死に至らしめるまで・・・ましてや自分よりも弱い小動物を積極的に
「狩る」ためにオナラでいたぶることなど、まずありえないはずなのです。
それでは何故、彼女がこんなことをするようになったのか・・・

それは、ある恐ろしい出来事から始まったのです。


                            ~つづく~

2匹目→http://b.dlsite.net/RG15520/archives/52677107.html