舞台は、とある小さな製薬会社の、化学研究室。
香子と修は、共に幼ななじみの新入社員です。
この日、いつもは遅くまで居残っているはずのベテラン社員達は全員、OBのお祝いとかいうことで飲みに出かけてしまい、研究室には香子と修の二人だけが残って仕事を続けていました。
それでは、どうぞお楽しみ下さい。『化学戦』です。


 『化学戦』


香子が下腹部の異変に気づいたのは、研究に打ち込む修のりりしい横顔を見つめていた時だった。
痛みはなかった。ただ、全く突然に、腹の奥の方で、ぼこり、と大きな泡がうまれた。そんな感覚だった。
ぼこり、ぼこり。大きな泡はさらに続けざまにうまれ、香子の腹を内側から圧迫した。
「ん・・・!」
香子の小さな唇から、あえぎ声がもれ出た。修が香子の方を見ている。
赤くなってうつむいたままいそいで席を立った香子を、修が大きな声で呼び止めた。
「キョーコ、ちょっと待って!どこ行くんだ」
「お、御手洗行ってくるね」
「今すぐ手を借りたいんだけど、それからじゃダメか?」
「でも、シュウちゃん・・!」
ぼこり、とまた泡がうまれる。香子は、肛門に力を入れて耐えた。
「なっ、ちょっと頼むよ、すぐ済むからさ」
「・・わかったわ。じゃ、何をすればいいの」
香子は慎重に歩いて修のそばに立った。
修のデスクには、化学物質を合成する為の装置と物質材料のビンが、ところせましと並べられていた。
「もう研究が完成しそうなんだが、足りない材料があるんだ。倉庫にも無い。協力してくれるよな?」
「えっ、協力?材料って?」
「インドールとスカトール」
「ええぇっ!?だって・・・もしかしてそれって・・」
香子は思わず、自分の尻を押さえた。修はそれを見て、笑って言った。
「その通り。オナラからなら手っ取り早く抽出できる。だから『協力』って言ったのさ」
香子は耳まで真っ赤になって首を振った。
「ダメッ!イヤよイヤ、どうしてそんな、だってシュウちゃん、自分のを使えばいいじゃないっ!」
「いや、僕のは、とんと出る気配がなくてね。でも君は・・・そうでもないんだろ?」
修はいたずらっぽく微笑んで言った。
香子の中でまた、ぼこり、と泡がうまれる。
「も・も・も・もしかして、これ、シュウちゃんのせい・・・?」
「30分前に飲んだコーヒー」
「あっ!」
香子は、修が入れてくれたコーヒーのことを思い出していた。
「キョーコ。材料、もらえるかな?」
「バカァ!!」
そう叫びながら香子のくり出した平手打ちは、修に手首をつかまれて止められた。
修は抵抗しようとする香子を引き寄せ、耳元でできるだけ優しく囁いた。
「ごめんよ。でも、どうしてもキョーコのが欲しかったんだ。君ので、この研究を完成させたかったんだ」
香子の抵抗が止んだ。修が手首を放しても、香子はそのまま、修に寄り掛かるようにしてうつむいて立っていた。
「シュウちゃん、あたしのこと好き?オナラしても、好き?」
「ずっと好きだよ。ずっと前から」
「・・・じゃ、あげるわ。シュウちゃんに・・・・。教えて、気が変わらないうちに。どうすればいいの?」
「この紙に成分を染み込ませるんだ。後でそれを抽出する。」
修は、手の平サイズの、ペラッとした半透明の紙を香子に手渡した。
香子は、一瞬ためらって、助けを請うような目で修を見た。
「御手洗でしてきちゃ、ダメ・・・?」
「わかってると思うけど、それじゃ持ってくる間に成分が散ってしまう。成分を定着させるための処理が必要だ。今、ここでね」
香子は小さくため息をついた後、足をもじもじさせながら、修から渡された紙を下着の奥へ入れはじめた。
「イ、イヤ、見ないで、恥ずかしい・・・・」
香子が哀願するように言うので、修は両手で自分の目を覆った。
「これでいい?」
「ウン・・あっ、はぁっ。もう出ちゃいそう・・・で、出るっ」

 『プゥッ・プゥゥ・ププ・プゥゥッ』

「いや・・大きな・・・音・・恥ずかしい・・」
「オナラの音もかわいいよ」
そう言いながら、修は指の間から薄目を開けて香子を見た。
香子は顔を真っ赤にし、肌を上気させながら、片手を乳房に、もう一方の手を股の間にのばしていた。

 『プスッ・プスーッ・プッスーッ・ブスーーッ』

香子が悶える度に、放屁の音が大きくなっていく。
修の周囲にも、異様なニオイがたちこめはじめていた。

 『ブゥゥーーッ、ブウッウウーーッ!』

「キョーコ、もういい、微量でいいんだ!ストップ!やめろ、おい!」
修の声に気づいた香子は、トロンとした目つきのまま、下着から抜き出した例の紙を修に手渡した。
すぐに作業にとりかかろうとした修は、手渡された紙を見て、目を疑った。
あろうことか、半透明だった紙が、まっ黄色に染まっていたのだった。
背後に忍び寄る気配に気づいて修が振り向くと、目の前に香子の、裸の尻があった。
香子の両手が尻の肉を左右に引くと、桃色の肛門が姿を現した。
「シュウちゃん、まだ出るんだから。責任、とってね。いい?するよ、オナラ・・・」
香子がそう言い終えると同時に、放屁の快音が部屋じゅうに響きわたった。

 『ブウッブウゥーーーウウッ!!ブブブウゥゥーー・・・・』

修はガスの海でおぼれながら、香子のコーヒーに盛った薬のことを考えていた。
あれはもしかして、コーヒーや香子の腹中の何かと混ざって、大変な物質に変化してしまったのかもしれない。
例えば・・・強力極まりない催淫剤とか?
すごいぞ、これは新発見だ。あの紙から上手く抽出できるかな?
修は気を失う直前、ニヤリと微笑んだ。
なに、大丈夫さ。あの紙で足りなくても、僕の顔は、あれ以上にまっ黄色にされつつあるんだから・・・・・


  完