「白ずきんちゃん気をつけて!」


むかしむかし、あめーりかという国のとある村に、おぎょうぎがよくて親切で、その上とてもかわいらしい、スカンクの女の子が住んでいました。
女の子はスカンクでしたので、小さな体に白黒の毛皮を着て、頭にはふわふわの白いずきんをいつもかぶっていましたが、その白いずきんが、女の子の小さな愛らしい顔にあんまりお似合いなもので、みんなはいつもその子のことを、白ずきんちゃん、と呼んでいたのでした。

ある日のこと、白ずきんちゃんは、森に住んでいるおばあさんのお家へ、おつかいをたのまれました。
お手製のパンとワインを入れたバスケットを白ずきんちゃんに持たせながら、母さんスカンクは言いました。
「気をつけてね。近ごろは、こわい怪物も出るんだから。」
「はい、お母さん。行ってきまあす。」
白ずきんちゃんは、元気に森へ出かけて行きました。

さて、森のおばあさんのお家では、黒い大きな狼が、おばあさんをつかまえたところでした。
ごっくん、ぺろり。
狼は、とうとうおばあさんを、まるごとのみこんでしまいました。
そして床に落ちた毛布をかぶり、おばあさんの寝ていたベッドにもぐりこんでおばあさんになりすましながら、誰かが訪ねてくるのを待っていました。
そこへ、ノックの音がしました。
こんこん。
「おばあさん、こんにちは。」

中からぜんぜん返事がないので、るすなのかしら、と思いながら白ずきんちゃんはもう一度、おばあさんのお家のドアをノックしました。
こんこん。
「おばあさん、こんにちは。」
するとようやくドアの向こうから、しわがれた声が返ってきました。
「入っておいで。カギは開いているよ。」
白ずきんちゃんが大きなバスケットを持ってお家へ入ると、おばあさんはベッドで頭から毛布をかぶって寝ていました。おばあさん病気なのかしら、と白ずきんちゃんは思いました。
白ずきんちゃんはバスケットを置き、ベッドのそばへ行きました。
すると毛布のはしから、三角にとがった大きな耳がとび出しているのが見えました。

白ずきんちゃんはびっくりしてたずねました。
「おばあさん、どうしてそんなにお耳が大きいの?」
すると毛布が少しずり下がって、しわがれた声が返ってきました。
「それはね、お前の声がよくきこえるようにさ。」
毛布のずり下がったところから、カッと見開かれた血走った目玉がのぞけ、やっぱり病気なんだ、と心配になって白ずきんちゃんはまたたずねました。
「おばあさん、どうしてそんなお目々が大きいの?」
「それはね、お前のことがよく見えるようにさ。」
「おばあさん、お声が少し変よ、おのどが痛いの?」
白ずきんちゃんが毛布をそっとめくると、ハアハアと熱い息を吐く、耳まで裂けた大きな赤い口があらわれました。
「おばあさん、どうしてそんなにお口が大きいの?」
お目々をまんまるにして白ずきんちゃんがそうたずねた時、狼は毛布からとび出して、白ずきんちゃんにおそいかかりました。
ごっくん、ぺろり。
黒い大きな狼は、小さな白ずきんちゃんを頭からひとのみにすると、言いました。
「わかったかい。こうしてお前を食べられるようにさ。」

狼のおなかの中にいたおばあさんは、白ずきんちゃんが急にあらわれたのでびっくりしました。
「あら、白ずきんじゃないかい。せっかく会いに来てくれたのに、すまないねえ。」
白ずきんちゃんの方も、びっくりして言いました。
「おばあさん、わたしたち、食べられちゃったの?」
「そうだねえ。あたしがもっと若かったら、こんなことにはならなかったのにねえ。あら。」
おばあさんはふと、白ずきんちゃんを見て言いました。
「あらあら、どうしておまえ、狼なんかに食べられてしまったの?
こらしめてやればよかったのに。」
おばあさんにそう言われて、白ずきんちゃんは、はにゃ?と首をかしげました。
「白ずきんや、おまえ、ちょっとここでオナラしてごらん。」
「ええっ、そんなこと、できないもん。」
おぎょうぎのいい白ずきんちゃんは、お顔を真っ赤にして言いました。
「だって、わたしのオナラ、とってもくさいのよ。」
おばあさんはそれを聞いて、コロコロと笑って言いました。
「おまえのそれはね、おまえやおばあさんにはくさいオナラですむのだけれど、狼をこらしめるのには、ゲンコツなんかよりよっぽどすごいおしおきの武器になるんだよ。」
白ずきんちゃんは真っ赤になったまま、どうしよう、と考えこんでしまいました。

そのころ、母さんスカンクは、白ずきんちゃんの帰りがあんまり遅いので、心配になって森へやって来ていました。
おばあさんのお家に入った母さんスカンクは、床に置かれたバスケットと、ベッドでいびきをかいている狼の大きなおなかを見て、白ずきんちゃんたちに何が起こったかを知りました。
母さんスカンクは満腹になって眠りこけている狼に近づくと、うしろを向いて尻尾を持ち上げ、狼の寝顔に向かって、黄色いオナラをひっかけました。
狼はしばらくむにゃむにゃと寝言を言っていましたが、急にぎゃあっと叫んでとび上がると、そのままベッドから落っこちてしまいました。
くさいくさいとわめいて床を転げまわる狼の前に立ちはだかって、母さんスカンクは言いました。
「今すぐあの子たちを、返して。でないと、もっとひどいめにあわせてやるから。」
狼は、憎たらしそうに母さんスカンクをにらんで言いました。
「何だと。おのれ。お前も食べてやる、かくごしろ。」
それを聞いた母さんスカンクは、狼にお尻を向けると、大きな音をたてて、とっておきのくさいオナラをしました。
母さんスカンクを食べてやろうと大きく開けた口の中へ、いきなりものすごいオナラをされた狼は、目玉がとび出るほどくさいそのオナラを、おもわずゴクンとのみこんでしまいました。

「あっ、お母さんのにおい。」
狼のおなかの中で、白ずきんちゃんは、お鼻をひくひくさせました。
くさいけれどとってもなつかしいそのにおいは、白ずきんちゃんの恥ずかしい気持ちを忘れさせてくれました。
ふさふさの尻尾がスルスルと持ち上がり、かわいらしいお尻が顔を出すと、白ずきんちゃんは一生けんめい、お尻の奥のあたりへ力を入れはじめました。

さて、母さんスカンクを食べようとしてかわりにオナラを食べさせられてしまった狼は、またもやぎゃあっと叫ぶと、ベッドの回りをかけまわりました。
オナラが目にしみて前がよく見えない狼は、あっちへぶつかったりこっちへぶつかったりしながら必死で母さんスカンクから逃げまわり、とうとうドアを突きやぶって、外へと逃げ出しました。
ふくれたおなかを抱えながらも走りに走り、追ってくる母さんスカンクをぐんぐん引きはなすと、狼は森の隠れ家へと逃げこみました。
「ハアハア、ここなら大丈夫。」
狼は安心して、隠れ家のベッドに横になりました。
するとその時、狼のおなかが、グーッと鳴りました。
おや、おなかはすいていないのに。
狼がそう思っていると今度は、プスプスプウーッというおかしな音が鳴りました。
そして、狼の鼻の穴から、黄色いけむりが立ちのぼりはじめました。
「ぎゃあっ、くさい、くっさあああい!!」
黄色いけむりは、白ずきんちゃんのオナラでした。
そのオナラのくささがあんまりすごいので、狼はベッドの上をはねまわり、とうとうベッドをめちゃめちゃにこわしてしまいました。
それでも、オナラの黄色いけむりは止まりません。
「ごぼげぼ、うげ、うえ、おええええーっ!!」
たまらず狼は、おなかに入っていたおばあさんと白ずきんちゃんを、吐き出してしまいました。

まずおばあさんがよいしょ、と出てきたあと、白ずきんちゃんの小さな体が、まるでさかだちをしているようなかっこうで、狼の大きな口の中から、ひょいっとあらわれました。
ちょうどその時、白ずきんちゃんのさかだちをしたお尻から小さなオナラがプシュッともれ出ると、すぐそばにあった狼の、大きな鼻の穴に吸い込まれていきました。
狼は、ぎゃふん!と鳴いて、言いました。
「もうしません。も、もう、ダメ。」
そして狼は、笑ったような顔のまま、目を回してひっくり返ってしまいました。
「エヘヘ。こらしめちゃった。」
白ずきんちゃんは照れながら、おばあさんにそう言いました。

白ずきんちゃんとおばあさんは、森の小道で母さんスカンクを見つけました。
母さんスカンクは、白ずきんちゃんを抱きしめて言いました。
「本当に、狼でよかったわ。怪物なんかにつかまったりしたら、それこそ大変なんだから。
どこか知らない遠いところへさらわれていって、オリにとじこめられたり、毛皮をはがされたり。
白ずきんちゃん、いい?ニンゲンという怪物にだけは、気をおつけ。」
「はい、お母さん。」
そして、白ずきんちゃんとおばあさんと母さんスカンクは、なかよく並んで森の小道を、おばあさんのお家の方へと帰って行くのでした。


おしまい。