極限流空手を初めて、もう15年。3歳から初め幾度となく過酷な修行に耐えてきた。ただ一身にロバートさんとリョウさんの後を追って来た。

「KOF、俺たちと一緒に出てみないか?」と誘われた時は本当に報われた気持ちになった。両親が事故で他界し、極限流空手に拾われた俺は、この恩は<極限流空手>でしか返す事が出来ないと思っていた。ずっとお世話になっていた、ロバートさんや、リョウさんに恩返しする瞬間が来た。そう思い、奮起した。


「ふんっ!ふんっ!」1人道場でサンドバックを叩き、瞑想、型。2ヶ月後に迫るKOFに望む為に精神を集中した。

「あれ?ユウヤじゃん。兄ちゃん達は?」と道場に入って来たのは、ユリ・サカザキ。リョウさんの妹だ。

「解りません。ロバートさんと何処か行ったんじゃないですか?」修行を中断し、ユリに向き直り、そう答える。ユリさんもリョウさん、ロバートさん達と同様にお世話になった。無礼な振る舞いをするわけにはいかない。

「そう。」ユリさんは、素っ気なさそうに俺に返す。


ユリさんは、俺の事が嫌いなのだ。

ロバートさん、リョウさん、ユリさんは本当に仲良し三人組だし、それは自他共に認めるような仲の良さだ。しかし、ロバートさんやリョウさんは、俺の事を本当の弟のように可愛がってくれる。そういう時、<女>であるユリは何処となく疎外感を感じているのだ。

4人で街に飲みに行ったときも、ロバートさんとリョウさんが飲み終わった後、キャバクラに行こうと言う話しになり、ユリさんを置いて三人だけで行ったり、<男の会話>をしている時などは、ユリさんが通っただけでも皆黙りこくってしまう。
確かに、ロバートさんもリョウさんもユリさんも強い絆で結ばれている。だが、<普通の日常>には、強い絆はそこまで必要ないのだ。

それにユリさんはストレスを感じている。そして、それに比例するかのように、メキメキと格闘技を身につけ、たった一年で普通の武道家、いや、それ以上の強さを発揮しはじめた。

ロバートさんや、リョウさんは、あいつはまだまだ甘いとか、基本が身に付いてない。とか、そういう事を言っているけど、ロバートさんやリョウさんが強過ぎるだけで、彼女の劇的な変化に気づいていない。

ユリさんは、リョウさんや、ロバートさんの前では明るく振る舞うけど、俺に対しては、ただ一度も笑った事がない。

「ユウヤ、KOFに出場するんだって?良かったじゃん」ユリさんも修行するのか、準備体操をし始めた。

「はい!ロバートさんや、リョウさんの足手まといにならないように頑張ります!」

「それじゃあ、私が稽古つけてあげるよ。」とユリさんは不適な笑みを浮かべながら言った。

極限流空手の段数で言えば、ユリさんより俺の方が位は上だからユリさんの態度は本当はまかり通らないが、目をつむった。

道場で向かい合いあった。

ユリさんはいつも通りの恰好で、赤いハチマキに、タイツ。そして、空手の上着を肩まで上げてタンクトップのように着ている。

「いくよ!!」と仕掛けて来たのは、ユリさんからだった。高速の蹴りが脇腹に向かうが、すんでの所でガードする。「やるじゃん♪」ニヤリと笑ったユリさんは、飛び上がったと思うと、手に<気>を貯めた。まずい!両腕を頭の上でクロスさせたと同時に、もの凄い重たいものが俺の両腕にのしかかった。ライコウケンと呼ばれる技だ。

ズンっ!! と地球に思いっきり、下から引っ張られる様な感覚だった。

「遅いよ。」声は俺の真下から聞こえた。俺は、ライオウケンの衝撃で両腕はまだ俺の頭の上にある。

「ユリ、ちょーアッパー!!」俺は顎下にユリのアッパーカットを受け、ふっ飛んだ。頭がグラグラする。これが、<サカザキ家>の持って産まれる力なのか。

「ま、、、まいり」俺は負けを宣言しようと、起き上がろうとすると、目の前にユリの膝があった。

「まだだよー」と繰り出されたのは、百烈ビンタならぬ、百烈太股ビンタだった。ユリさんは右の太股で往復ビンタするように俺を殴っている。ドスっ!ドスっ!

「これも、中々使えそう♪私脚力には自信があるから、上手く入れれば、ビンタみたく出来るなぁ。ビンタ程早く出来ないけど、一発が重いから、起き上がり間際の敵には効果抜群ね♪そう思わない?」ドスっ!ドスっ!

ユリさんの言う通りだ。ユリさんは、俺に跨がる感じになり、俺の両腕を拘束しながら、膝に近い太股で俺をビンタしている。ある程度のスピードもあり、中々脱出できない。

「トドメいくよ~♪ちょーユリ絞め!」朦朧とする意識の中で、ユリさんの声が聞こえた。シュルっと、ユリさんのタイツが俺の首に擦れる音がして、ユリさんのムチムチの太股が俺の首に巻き付いてると解った。

<空手>のみに拘らない、ユリさんの探究心や武道へのあらゆる着眼点が、ユリさんに極限流空手新基準との評価を与え始めたのかも知れない。KOFはサイキッカーや様々な能力、格闘技が入り交じる。

もう、今まであった<空手家同士の戦い>ではなく、<空手家とその他の武道家の戦い>にシフトしてきているのだ。

ユリさんは、4の形をかたどる様に足を形成し、俺を絞め上げている。腕はユリさんの両脇に挟まれ、万歳した恰好のようなまま、その状態から全く動けない。

「どう、これ効く?」とユリさんは俺の顔を覗き込んで来た。俺は、頸動脈を絞められ、落ちる瞬前だったので、その質問に答える事が出来なかった。

だが、「そっか。」とユリさんは、言って俺に笑顔を初めて見せた。

俺はその太陽の様な笑顔を目に焼き付けながら、静かに眠りについていった。