「とりあえず、今日は何する?」
うだるような暑さ、車の中には熱源が2つ。
「プールとかどうよ?」
「いや、女っ気がないのに行っても楽しくなかろう」
「行けばいるかもしれないじゃん!」
「俺らにナンパができると思うか?」
「じゃあどうしろって言うんだよ」
「それを今から決めるんだろうが!」

 

カーラジオから流れる甲子園中継を横目に、車は走り続ける。
当てもなく、目的もなく。
ただただ、車を走らせていた。

 

「そういえば、今日持ってきた?」
「あー、持ってきたよ」
「そうかー、じゃ、いつもの奴ヤルか!」
「お、ならカバンからホワイトボードとペン出してくれ。運転中だから手が離せねえよ」
メガネケース型ペンケースには、一本のペンとイレイサー。

「お題です!」
その一言に、車の中に緊張感が走る。
「30年ずっと大事にしていたダッチワイフに宿った特別な能力とは?」
その発言と同時に、ペンが走る。はい、と言う挙手と共に、回答が出る。
「『では、入れます』とだけ喋る!」
「ローションが何もしなくても出てくる」

 

……

 

…………

 

………………

 

 

「……どうよこれ」
「どうって、何よ さすがに『フェラはすっげぇ気持ちいい!』がひどすぎたか?」
「いや、それじゃなく。コンなことしてて、良いのかなぁって」
「楽しいじゃん! 楽しくない?」
「いや、大喜利は楽しいさ デモさ、こうやって、男ふたりで車に乗ってさ、目的もなく大喜利してるって言うのはどうなのよ」
「どうよ、って言われても……」
「もうさ、俺ら24じゃん。これぐらいの年だとさ、もう彼女の一人いてもおかしくはないじゃん。デモさ、俺ら、そんなの全くないじゃん」
「あ、ああ……」
「それに、俺ら……」
「うん……」
「童貞じゃん……」
「あ、えと……」
「童貞がさ、コンなことしてちゃダメだと思うンだよな。もっとさ、モテるような努力をした方が良いと思うンだ」
「そ、そうかな……」
「そうだよ。おまえはさ、まだ車が運転できるから良いじゃん。俺は免許も持ってないしさ。顔も悪いし。そもそも、合コンでも『大喜利って何?』って言われるじゃん」
「いや、俺ら、大喜利天下一で優勝を競ったじゃないか! 好きなことをして何が悪いんだよ!」
「ああ、大喜利は俺たちの青春だった。でもさ、そんなの、関係ないじゃん。こんな、童貞くさいことやってちゃダメなんだよ。いつまでも青春にしがみついてちゃダメなんだよ」
「あのさ、楽しいことをするのって、そんなにダメかな」
「ダメじゃないとは思うさ。でも、それを捨てないといけないときもあるんじゃないかと思ってさ」
「確かに大喜利ってマイナーな遊びさ でも、俺たちは楽しいからやってきた 楽しいことをするのに理由っているのかな。確かに、何でやってるかなんて分からない。何の役にも立たないかもしれない。でも、楽しいから良いじゃないか。」
「役に立たないといけない時期だよ、実際」
「そ、そんなこと……」
「そうだろう? 大喜利が青春だった俺たちに何が残った? 就職も無い、プーじゃないか。今も深夜ラジオに投稿し続けるだけだし、彼女もいない。こんな人生に価値な(ピッポロピッポーピッポポポポポ♪)」
「あ、ゴメン電話だわ(ピッ)あー、梓ちゃん? 今? ちょっと友達とドライブ~ 来週つれてってやるからすねるなよ~

後、例の企画書、部長なんて言ってたか分かる? 分かったらメールよろー じゃあねー また電話スルー(ピッ)

あー、ゴメンゴメン何の話だっけ?」

 

 

車は走り続けた。

当てもなく、目的もなく。