The Blue Sky GenerationのBlog

The Blue Sky Generetionのkawajanzのブログです。 発売中の作品に『世界史B ALL下ネタゴロ合わせ年表』と『Fate/for the permanent peace (成人向け版)』があります。

帰郷前昼

/帰郷前昼 2

2/

「…静音ちゃん大丈夫?」
 少し経って、わたしのもとに幹也さんが来てくれたのでした。
「静音ちゃんの声がなかったら間に合わなかったよ。ありがとう」
 と言いながら、そっと頭を撫でてくれる。周りの人がわたしたちを避けながら冷ややかな目で見てくるけれども、幹也さんはそんなことを気にしていない。ただ、わたしのことを考えてくれてる。
「そろそろ、落ち着いた?」
「……はい、だいぶ」
 地面に座り込んだわたしに視線を合わせてしゃがんでくれていた幹也さんは、すっと立ち上がり、わたしに手を差し出した。……かっこいい。
「よいしょ。それで、静音ちゃん」
 まるで亡霊のように、わたしは幹也さんのされるがままになっていた。もうどうにでもなーれって感じ。
「見たところ、実家に帰る途中みたいだけど」
「はっ、はい!そうです!!」
 叫ぶように返事するわたし。正直、男の子の件で何年か分の緊張感を味わった上に、目の前には幹也さんがいるのだから、この場で死んでしまいそうな精神状態なのだった。
「次の電車まで時間はあるかな?」
 やりました!思い描いたシナリオ通りの展開。このチャンスを逃す手はない。
「そりゃあもう、大丈夫です!!日が暮れるまでお付き合いします!!」
「いや、日が暮れるまでは僕が無理なんだけど……」
 うあっぷし、言い過ぎたか。
「じゃ、アーネンエルベでゆっくり話そうか。男の子を救ったのは僕じゃなくて静音ちゃんだし、正当な報酬がないとね」
 それでも、運命には逆らえないのです。
「それで、幹也さん」
「ん?なに」
 どうにも、緊張しすぎてわけがわからなくなってるわたしは、無意識にとんでもないことを言い放った。
「スイカパフェにします」
「はい?」
 未来で視た言葉をそのまま言ったんだけど、残念ながらタイミングが間違っていた。ガクリ

 

/帰郷前昼

新作発売記念です。現在、私のサイトで連載中の長編SS空境夢深(略称)の外伝的短編SSを書きました。私のサイトをお読みになっていない方でもお読みいただけます。時系列的には、空境夢深の前の夏休みの話なんで、むしろここから空境夢深に繋がる感じです。

では、スタートです。

『空の境界 the Garden of sinners 夢想深深』
      ~外伝 帰郷前昼~

1/

 幹也さんと運命的な出会いを果たしてから今日で丁度一年。
 やはり、問答無用で夏なのであった。
 バスに揺られるわたし瀬尾静音は、お酒造りの魔神の巣窟である我が家への強制帰還命令によりJR観布子駅を目指していた。
 例の如く自由を奪われる瞬間の切ない映像を三日前に見たときは、失意のどん底にたたき落とされた。今年こそ父の「今年は帰ってこなくていい」発言を信じて、一縷の望みをかけていたにもかかわらずやはり呆気なく望みは絶望へと変化した。ただ、今年の夏はひと味違った。次の日の映像で、わたしは息を吹き返すこととなる。

 そこには、喫茶店で幹也さんとお茶しているわたしの姿があった。

 もうこの瞬間からわたしのテンションは最高潮に達し、日の丸飛行隊もびっくりのK点越えを連発しまくり。脳みそは煮えくり返り、おいしそうな匂いが頭の中からしてくるくらい、そりゃあもう興奮していた。

 幹也さんと会える!!

 今乗っているのがバスっていうのがもどかしい。ちんたらちんたらと進みやがって、早く幹也さんに会わせろやと運転手に言いかねない高揚感を一時間弱維持しつつ目的地に着々と近づいていった。

 いたっ!!

 バスの窓から幹也さんらしき夏なのに真っ黒な人影を発見した。バスは彼を追い抜いてバス停に停車する。るんるん気分でバスのステップを降りるわたし。次の瞬間、映像が切り替わった。

 喫茶店から勢いよく飛び出した少年がトラックに轢かれて見るも無惨な姿になっていた。

 一年ぶりの"他人の未来死"を視てしまい恐怖と戦慄がわたしを一瞬のうちに支配する。いくら走っても、喫茶店を飛び出す少年を受け止められる場所には辿り着きそうもない。

 どうしよう、このままじゃあの子が死んじゃうっ!!

 ダメとわかっていても、勝手にわたしの足は動き出していた。端から見たら不思議でしょうがないだろう。わたしは鬼にも勝る形相で、全力疾走をしていた。でも、やっぱりこのままでは間に合わない。予定事件現場に目をやると、丁度そこに真っ黒人間が歩いてくるのが見えた。

「幹也さん!!飛び出してくる男の子を絶対に捕まえてください!!!」

 人目も気にせずシャウトする。群衆は驚きのあまり動きが完全に止まる。しかし、わたしの声に反応した幹也さんだけは違った。

 一瞬の出来事だった。

 わたしが視た通りに男の子は店の中から飛び出した。お母さんの「危ない!!」という叫び声を尻目に男の子は車道に向かって何の躊躇もなく走り出す。もうダメかとわたしが目を瞑ったその瞬間、未来が変わった。

 目を開けると幹也さんは男の子を抱えていた。そして、感謝の言葉を何度も何度も口にする母親の姿と照れながら何度も何度も頭を下げる幹也さんの姿があった。どうしようもなく、涙が止まらなかった。
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