2011年08月23日

ニホンオオカミ ~絶滅説の幻~

ta000





















ニホンオオカミには近年になって、有力な生存の可能性が出ている。
1996年(平成8年)秩父の山中で2000年(平成12年)大分祖母山系でニホンオオカミらしき野犬が目撃され、撮影もされている。大分祖母山系でニホンオオカミらしき野犬を発見し、写真に納めた西田智さんの著した『ニホンオオカミは生きている』の中には鮮明なカラー画像が掲載されていて、これを「ニホンオオカミの可能性が高い」とオオカミ研究家の第一人者として名高い、元国立科学博物館の今泉吉典さんが述べたという。同氏は標本及び残された文献から「ニホンオオカミである」とする根拠を、

1.耳の前から頸(くび)にかけて走る頬髭

2.後ろが断ち切られた様な頸(くび)の鬣(たてがみ)

3.耳の後ろと四肢の外側の毛が、赤みがかった鮮やかなオレンジ色を示す

4.手首の上方前面にわずかに見える暗色斑

5.先端が断ち切られた様な丸い尾(標本でも見られるニホンオオカミの特徴)

6.尾の基部上面(フェロモンの一種を出すスミレ腺)と先端部の限られた黒色部

tg001















祖母・傾山系にて2000年7月8日18時頃撮影の「ニホンオオカミに極めて類似するイヌ科の動物」

この件に関して撮影場所に「あれはウチで飼っていた四国犬です…」という告白文が張り出されていたという。そこで、何枚かの〈四国犬〉の画像を集めたので、比較してもらいたい。

tg002




















確かに、この〈四国犬〉が野イヌ化し、痩せ衰えたらこんな風に見えなくもない。だが、異なる点もある。尻尾の形状だ。
尾を垂らしたまま移動している。イヌの尾に巻き尾・さし尾・カマ尾などが多いのは、尾と尾の付け根の筋肉が退化した為であるという。

さらに毛色だが、海外にあるニホンオオカミの毛皮標本にもこんなものがある。

tg003


















ベルリン自然史博物館蔵

tg004


















ニホンオオカミの群れにマダラの毛色のものが加わっていた話や絵(「狼図」狩野元信画)などの資料もあるので、毛色だけで「オオカミではない」かどうかは明確に断言できないようだ。体型・骨の形状(特徴)・習性などがものをいう…最終的には、捕らえて調べるしかないのか。

tg005















1996年(平成8年)秩父の山中で撮影された謎の「イヌ科動物」。

tg006















「1996年10月秩父山中で撮影された犬科動物」より
http://www.geocities.jp/canisyagi/wanted/photo.html

tg007


















「ニホンオオカミ」の剥製(和歌山県立自然博物館蔵)

tg008


















ニホンオオカミの模造剥製(神奈川県立地球博物館)

先の今泉吉典さんがあげた6つの特徴に加え、以下にニホンオオカミ研究に携わった人々の定義したニホンオオカミの身体的特徴及び習性を並べてみた。

*目は丸い。(和犬は目が三角)

*耳先は丸く、耳は肉厚で頭の真上に付いている。(和犬は耳先はとがり、耳は頭の横に付いている)

*頭部の額段がない。

*歯は、最初42本で、成長すると48本(大陸オオカミの歯は42本、ヤマイヌの歯は40本)

*上唇は上がかぶさり気味。

*体色は首から頭への赤暗褐色、口角の隈取り、背中の松皮模様、前足の線紋、後足の鶏頭花形、尻尾中央部の三条の横縞。 

*指間の皮膜が発達して、水掻きのようになっており、皮膜に剛毛が生えている。

*後足も五指。

*山岳地帯を駆け登り、駆け下りる必要から前脚が短い。

*後脚は跳躍力を増すために太腿が太くなっていく。(ヤマイヌは細い)

*前脚のつけ根とつけ根の間が狭く、背中は盛り上がって、体全体の筋肉を伸縮して走る体型となっている。

*ヤマイヌに比べ大きい。

これらを総合して判断すると、ニホンオオカミはイヌ科でなく、日本独特の哺乳類という結論が導き出せる。(ヤマイヌはオオカミや地犬よりも「ジャッカルに近い」という人もいる)

―習性など―

*独特の長く大きな遠吠えをし、「ワン、ワン」とは鳴かない。

*高度1000mから1300mまでの山に棲息。(高度1300m以上の山にはいない)

*照葉樹林以外には住まない。

*固有の獣道を持っている。(犬は獣道と呼ばれる犬自身の道を持っていない)

*山峰に広がるススキの原などにある岩穴を巣とし、そこで3頭ほどの子を生む。

*テリトリーに浸入した者の後を付ける。(送り狼)

参考資料:世古孜さん「ニホンオオカミを追う」斐太猪之介さん「オオカミ追跡18年」・他

tg013











ニホンオオカミの頭骨
tg014













ニホンオオカミの全体骨格標本(国立科学博物館蔵)

ニホンオオカミは体型や遺伝子的にヤマイヌと呼ぶのが正確で、そもそも《オオカミ》と呼んだ所に間違いがあったという人もいる。ハイイロオオカミの系統・亜種でなければ狼とは言えない、と定義づけするならばそうだろう。また今泉吉典さんもニホンオオカミの頭骨を研究した上で、ハイイロオオカミのそれとは頭骨に6ヵ所の相違点があり「独立種と分類すべき」としている。でも見た目がどうあれ肝心なのはオオカミ的性質の方で、ニホンオオカミとヤマイヌの習性に明らかな相違がある以上大した問題とは感じられない。オオカミとヤマイヌは習性が違うがゆえに、別々に住んでいた。昔の人間は彼らを見間違えたりはしなかったという。ヤマイヌは性格が凶暴で家畜、時には人も襲ったが、オオカミは一線を画せば、むしろ人にやさしく(捕まえても決して馴れず、人からの餌は絶対食べなかった)誤解を怖れずに言えば、誇り高い性質だったと考えられる。むしろ、日本独特の固有種で異なる系統である可能性もあり、だとすれば世界的にも貴重な存在といえる。オーストラリアのタスマニアタイガーとよく似た境遇ではないか…。

tg015









タスマニアタイガー(絶滅種)

そもそも「ニホンオオカミ」という呼び名は、明治になって現れた新しい呼称である。もっとも江戸時代ごろから、〔ヤマイヌとは別である〕と明記された文献も現れてはいたが。

tg009


















1999年3月6日の記事(夕刊)毎日新聞

tg010

































2004年4月20日の記事(朝刊)毎日新聞

農耕民族である日本人にとってシカ・カモシカ・イノシシこそが農作物を荒らす害獣で、それらを駆除してくれるオオカミは、農民にとっての益獣であった。そのため、日本各地には、狼を神とする神社も存在する。

tg011









三峯神社の護符と各神社の御札

tg012









呪い用のオオカミの骨と数珠・御札版木(東京都)・憑き物落としに使用のオオカミ頭骨(埼玉県)

まったくの勘だが、かつて日本狼と呼ばれた生物は今もいるだろう。学者の言うことは全くアテにはしていない しかし地元の、しかも猟師の言うことならば私は100%信じる。

昔の日本では、夜道を歩いていると狼が人間に付いて来ることがよくあった。これは偶然縄張り圏に踏み込んだ者でも監視し安全を確認するためだと言われ、それが「送り狼」という言葉として今に残っている。
むしろ猪などが避けるため、よほど安全だったと考えられる。残された文献からすると、自己防衛以外は襲ってこないニホンオオカミは人間に対して大きな警戒心は持っていなかったと考えられる。

ちなみに、「送り狼」はだいたい江戸時代中期頃からの昔話だと言われ、それが日本全国の民話に登場する。ところが、四国・高知県佐川町、仁淀川町には昭和10年~20年代というごく最近の「送り狼」のエピソードまでが語り継がれているという…。

〝彼ら〟が明治38年に絶滅していると断言されると、逆に信じられないのである。


tg016



RG08117 at 23:34│Comments(3)TrackBack(0)│ │オイノ談義 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by ニホンオオカミらぶ♪   2014年01月14日 18:59
5 ニホンオオカミ!生きていてほしい!!
2. Posted by caracol   2014年11月04日 08:21
ヤマイヌとニホンオオカミは違うんですか…初めて
知りました(・・
狼は賢いし、日本は山が多いので、可能性は十分
ありますね
でも、生きていても発見されないほうがオオカミ
にはいいかな(^^;
3. Posted by 棚町俊一   2015年01月28日 12:54
西田先生 その後、日本オオカミの調査は如何でしょうか。情報提供がありましたら、連絡いただけるとありがたいです。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字