※この話はCG無しです

数日後・・・
その日の朝、静子はパートを休んで早い時間に出て行った
昨夜静子の母親から電話があり、静子の父親が入院したと言うのだ

そんな訳で一馬が目覚めた頃には静子の姿はなかった
テーブルの上には冷えた朝食のおかずが一皿と新聞のチラシ裏に書かれたメモ、そして1000円札があった

メモには朝食と昼飯の用意は出来てる事、夕食と明日の朝食は1000円でどうにかしろという事が書かれている
どうやら静子は明日の昼頃に戻ってくるらしい

静子の実家は隣県のド田舎なので電車で行ってもそれなりに時間がかかる
本来なら一馬も行くべきなのかもしれないが、今回は命に関わる入院ではなかったらしいのでひとまず静子だけ行く事となったのだ

その事に一馬は少し安堵していた
一馬は静子の父親、つまり自分の祖父が好きではない

できる事なら葬式まで会いたくないのが本音だ
そして欲を言えば母親を祖父と近づけたくないのも本音だった

静子も父親と仲が悪いのである
そもそも今こうして静子が一馬と二人暮ししている原因の一つは静子の父親にある

夫と別れた後静子は実家で暮らす事もできたのだが父親と大喧嘩して家を離れ一馬と共に団地住まいとなっているのだ

ともあれ、一馬にとってひとまずの悩みは夕食をどうするかである
それを考えるためにもまずは朝食だ

一馬は洗面所で顔を洗ってから朝食の支度に取り掛かった
鍋の味噌汁を温めなおし、炊飯器から白飯を茶碗に大盛りでよそって冷えた目玉焼きに醤油をぶっかける
熱々の味噌汁をお碗に注げば準備完了だ

一馬は味噌汁を一口飲んでから少し冷えた飯をほおばった
熱が程よくひいたご飯は炊き立てのご飯とは違った美味さがある

喉を動かした後、冷めた目玉焼きを一切れ口に入れ醤油味が広がったところへ再び白米を運び込む
一馬は飯をほおばりながら夕飯の事を考えていた

一馬は料理ができない
米も炊けない

そして2食分を1000円・・・
自販機のジュースが全国100円の時代においてもラーメン屋で大盛りラーメンと大盛りライスを頼めば1000円はほぼ終わりである

かと言って自腹を切って飯を食うのは貧乏学生の悩み所だ
一馬は自販機のジュースを我慢して金を貯め、エロ本に使う健全な貧乏男子である(今はコンドームに全額投資中)

そんな男が1000円をどう使うかは非常に悩ましい
飯を我慢してエロに使いたい・・・しかし空腹には耐えられない

一馬のように毎日走っている若者であればなおさらだ
かと言って腹いっぱい飯を食えば1000円では足りない・・・

冷えた味噌汁をずずーっと流し込み、一馬は白飯のおかわりを茶碗によそう
普段は静子がおかわりをよそっているが、一馬が自分でやるときは山盛りにご飯を盛るのであった

その量は普段のおかわりの倍量である
山盛りご飯を片手に構え、半分残した目玉焼きをオカズに二杯目を美味しそうに食べる一馬

『せめて飯を炊く事ができれば・・・この機会にやってみるか・・・いや、下手な事して炊飯器壊したらえらい事になる・・・となればやはり1000円でどう食いつなぐかだ・・・』

一馬は悩みながらも茶碗の白飯をモリモリ食べまくる
運動部に所属している一馬はとにかく腹が減るのだ

『食パンを買えるだけ買えば・・・しかしそれじゃ味気ないんだよなぁ・・・やっぱご飯が食いたいなぁ・・・そうだ!海苔弁なら3つ買えるんじゃ・・・いやいや、落ち着け、それなら焼肉弁当大盛りを一つとライス大盛りで2食分という手も・・・』

二杯目のご飯を片付け、味噌汁もおかわりして3杯目の飯を炊飯器からよそって盛り付ける
炊飯器に残ってたご飯は丁度全部一馬の茶碗に納まった
大盛りの3杯目は漬物と味噌汁で楽しむようだ

ポリポリと漬物を噛みしめ3杯目の山盛り飯もおいしそうに食べていく一馬
これだけ食っても腹が引き締まって余計な脂肪がついていないのは若さと毎日の長距離走のおかげである

『なーんかもっとないかなー・・・美味しく腹いっぱい食えるモノ・・・1000円で夕飯と朝飯になるような・・・』

飯、味噌汁、飯、オカズ、飯・・・一馬は考えながらも手と口を休める事なく朝食を片付けていく
静子がいれば見ているだけでお腹がいっぱいになってくる光景だが、一馬の表情に満腹の苦しさは微塵も無い
やがて朝食を綺麗に食べ終わり一息ついた所で一馬の頭に名案が浮かんだ

『あ!そうか!自分でどうにかしようとすっからダメなんだ!広美の家で飯食えばいいじゃん!』

一馬は自分でも図々しいかと思ったがこんな時は素直に相手に頼った方が良さそうだと判断した

『こういう事で頼りにすると広美喜ぶんだよな~。料理も上手いし・・・よし!今夜は広美の家に泊まろうっと!』

悩みが解決したところで食後のお茶をいれて一息つく一馬

『ふー、たまにはこういう朝も悪くない、いつもはおかわりが多いと怒られるからなぁ・・・あぁ腹いっぱいで良い気分・・・』

一馬はお茶を飲み干して再びチラシ裏のメモを読み直す
メモには朝食と昼飯の用意は出来てる事、夕食と明日の朝食は1000円でどうにかしろという事が書かれている

『朝食と昼飯の用意・・・あ!まさか!』

一馬は慌てて冷蔵庫の中を確認した
そこにはラップをかけた野菜炒めの乗った皿が一つあるだけだった

「し・・・しまった・・・うっかり昼の分のご飯まで食っちまったー!」

炊飯器を空けてもそこには米粒一つ残っていない
味噌汁もおかわりしたので空である

「あぁあああああああ!!そりゃ腹いっぱいになる訳だよ!ちくしょおおお!なんで全部食っちゃうんだよおおお!!」

冷蔵庫の前でがっくり膝をつく一馬

「・・・はぁ・・・飯が無いならオカズがあっても仕方ない・・・」

一馬は冷蔵庫の中から野菜炒めの皿を出してテーブルの上に置くとラップを剥がした

「オカズだけあっても目の毒だからな!いっただきまーす!」

結局この日、一馬は朝から腹いっぱい飯を詰め込むだけ詰め込んで学校へ行きグランドを走り回る事となった
これだけ食べても元気に走り回れるのは若さの証である

腹具合の解消も兼ねて午前中たっぷり走り回った一馬
あれだけの朝食を詰め込んだにもかかわらず、その腹はもうひっこんでいる
一馬の身体はエネルギーの吸収も早いようだ タフな男である

一馬は水飲み場で一息ついた後職員室の方を探ったが広美の姿は無かった
どうやらこの日、広美は非番で休みのようである
アテが外れてがっくり肩を落とす一馬

『はぁ・・・家に帰ってから広美に電話してアパートに行くか・・・出かけてなけりゃいいんだけど・・・って!考えてみたら俺広美のアパートの電話番号知らないじゃないか!終わった!』

いくら一馬でもアポ無しで広美の部屋に突っ込む度量はない
広美にとって一馬は恋人であると同時に生徒でもあるのだ

一馬が広美の部屋の前で待ってるなんて事をアパートの住人や近所の人達に知られたら広美にどんな迷惑がかかるかも分からない
広美と付き合う事で一馬は多少客観的に自分の立場を考える事ができるようになっていた

『・・・仕方ない・・・やはり頼みの1000円で弁当屋に行ってみるか・・・海苔弁当も醤油かけたら全部オカズにできるよな・・・そこにライス大盛りを3つって戦略・・・これなら多分腹いっぱい食えるんじゃねーか・・・』

水飲み場でぶつぶつと飯の事を考える一馬
そこに練習を終えた鳴瀬川優子が近づいてきた

最近は一馬と優子が一緒にいる所がよく見られるようになり、その距離感から二人が付き合っているのは一目瞭然であった

「一馬君お疲れ、一緒に帰ろ?」
「・・・ついに俺もごはんをオカズにごはんを食う日がやってきたか・・・醤油かければ何でもオカズって考えは悪くない・・・海苔もオカカもついてるし味は十分・・・これで味噌汁があればいくらでも・・・」

「一馬君?かーずーまーくーん?」
「ん?あぁ優子か、ごめんちょっと考え事してた」

「何?ごはんをオカズにごはんって?」
「あぁいや、実はさ・・・」

一馬はこれまでの事情を優子に説明した

「じゃあ私がご飯作ってあげようか?」
「え!いいの?」

優子の思いがけない提案に一馬の表情が明るくなる
普段から優子には昼食のパン弁当(一馬にとってはおやつ感覚)も作ってもらっているだけに遠慮していた一馬だが、優子からしてみれば自分が一馬のために好きでやっている事なので全く苦にはならない

「うん、任せて!料理は得意なの!カレー作ってあげるね!」
「いいね!カレー大好き!大盛りで食うぜ!ついでにご飯も炊いてくれ!米はあるけど炊き方が分からなくて困ってたんだ!」

「うん、いいよ!で・・・その・・・今夜は一馬君一人なんだよね?」
「うん」

「・・・」
「・・・ん?・・・あ!」

一馬をじっと見つめて頬を紅くしている優子の眼差しで一馬はやっと優子の言いたい事を察した
相思相愛であっても鈍い男である

「・・・ハハハ、その・・・良かったら泊まってく?」

一馬の言葉に優子は顔を真っ赤にして頷いた
こうして夜は恋人同士過ごす約束をした一馬

その後優子と一緒に家に帰って昼食を共にしたが、この日は食後のエッチをしなかった
お楽しみは夕食の後で・・・という約束をした為である

その後優子は一度家に帰って普段着に着替えた後、夕方に近所のスーパーで一馬と待ち合わせをして夕食の買出しをしていた
二人並んで買い物をするのも初めての経験である

優子は一馬と外で一緒にいる事がとても嬉しいらしく表情が明るい
一馬はそんな優子の後ろをカゴを片手についていく

一馬も表情は嬉しそうだったが、内心では昼間にエッチできなかった分欲情した身体に歯を食いしばってブレーキをかける事に勤めていた
一馬にとっては優子の後姿を見ているだけで欲情のアクセルが踏まれている状態なのだ

普段見慣れている運動着姿、制服姿の優子はもちろん魅力的だが、普段着の優子も魅力的だった

優子はその性格を現すように服のデザインも色合いも落ち着いた目立たないモノを着ている
しかし夏衣装特有の薄い生地からは優子の身体の丸みがよく出ており、一馬は優子の後ろを歩いているだけで欲情してしまうのであった

夜はこの身体をたっぷり味わうことができるかと思うと一馬は湧きあがる欲情を禁じ得ない

「ねぇ一馬君、デザートは何がいい?」
「え?あぁ、何でもいいよ」

「もぉ、それが一番困るよー」
「じゃー・・・アイス!アイスがいい!」

「どんなアイスがいい?」
「カキ氷、優子は?」

「私はやっぱりバニラアイスかな~チョコも好きだけど」
「それもいいな」

他愛ない話を弾ませながら買い物を楽しむ二人
カレーの材料とアイス二つは予定通り千円の枠内で納まった

半分は優子も払うと言ってきたが飯を作ってもらった上に金まで払わせたのでは一馬も流石に気がひける
優子は広美と違って一馬と同じ学生なのだ

買い物を済ませて店の外に出たとき、一馬は不意に後ろから声をかけられた

「おい、一馬」
「ん?」

一馬と優子が足を止め振り返るとそこには広美が立っていた

「げ!」
「お前今「げっ」って言ったか?」

広美のこめかみに青筋がピキっと走る

「気のせいですって宮野先生!」
「ほぉ~・・・」

広美はメガネの奥で目を細めて二人を見つめる
その手に買い物袋を持っていない所から察するに広美は今から店に入ろうとしていたようである

普段着のラフな格好をした広美を見るのは一馬も初めてだった
その衣装も広美の性格を表すように、一見目立たないラフな衣装ではあるものの、そのデザインは流行を取り入れたブランド物らしかった
スタイルの良い広美はその衣装が良く合っている

アパート住まいでも外に出るときはそれなりの格好をしなければいけないと思っている広美らしい普段着だった

「フンまぁいい・・・で?何してんだ二人揃って・・・まさかお前達・・・」

広美のメガネが夕日を反射してギラリと光る
一馬と優子が付き合っているのは察していたが、一緒にイチャイチャしている場面に出くわしたのはコレが初めてだった

一馬の毛穴からドっと冷たい汗がにじんでくる
一馬の隣の優子も担任の教師に見つかった事で戸惑いの色が表情に表れている

「い、いや違いますって、な?優子?」
「そ、そうよね!一馬君?」
「ほぉー・・・随分と仲良しだなぁお前達・・・ちょっと話を聞こうか」

広美は二人を店の裏側へと連れ出した
その後ろをしぶしぶついていく一馬と優子

「・・・で、何してんだ?」
「いやその・・・実は・・・」

こうなっては下手な嘘やごまかしが効かないと判断した一馬
素直に広美に事のいきさつを説明した

「なるほど一馬が一人で留守番なぁ」
「一馬君ご飯作れないから私が・・・」
「そ、そういう事なんですよ、ハハハ・・・」

「よし分かった、鳴瀬川、お前は帰っていいぞ、ココは私が責任もって一馬に飯を作ってやるから」
「なっ!?」
「え?」

広美の思わぬ提案に一馬も優子も目を丸くして言葉を失う

「私はお前達の担任だからな、仕方ないから面倒みてやるよ、な?一馬?」
「え、えーと・・・」

言葉を探っている一馬を優子が無言で見つめる
いや、見つめるというよりはにらんでいる
その表情は今までに一馬が見たことが無いほど険しいものだった

「私に任せておけ、な?一馬?」
「あ、いやーでも折角優子が・・・」

言葉を濁す一馬の前に広美が一歩ふみでてその瞳をにらみつけた

「私が作る」
「はい」

広美に逆らいきれなかった一馬はあっさり折れた
そうなると今度は優子が黙っていない

「ちょっと一馬君!私が最初に作ってあげるって言ったのに!」
「お、落ち着け優子、また今度・・・な?」

なんとかその場をとりつくろう一馬
しかし今度は広美が横から言葉を投げてくる

「ほぉ・・・また今度があるのか?」
「モノのたとえですってば!」

「・・・私だって」
「ん?」

「わ、私だってその気だったんですから!楽しみにしてたんですから先生邪魔しないで下さい!」
「ほぉなかなか食い下がるじゃないか・・・おい一馬、選べ、私と鳴瀬川どちらの料理を食いたいか今ココで」
「う・・・」

一馬は急に選択を迫られ思わずあとずさった
後ろに下がった一馬の前に優子と広美が闘志むき出しで選択をせまる

「私でしょ一馬君!約束したよね!?」
「私に任せろ一馬、ちゃんと面倒見てやる」
「・・・あ・・・あ・・・」

一馬の頭の中をグルグルと選択が回る

優子を選べば広美が怒る
広美を選べば優子が怒る
アチラをたてればコチラがたたず・・・

「一馬君!?」
「どっちだ一馬!?」
「え、えーと・・・」

もはや時間の猶予は無い
考える時間が無いとき、余裕が無いとき、進退きわまった人間は本能や直感に従う
一馬は足をズイっと踏み出し二人の肩を抱いた

「分かりました!両方の料理食います!」

一馬の言葉に広美と優子のビンタが左右から飛んできた
バチーンと肉を叩きつける音が響いて一馬はその場に崩れ落ちた
その両頬は真っ赤に腫れあがっている

「ココでハッキリ言えない一馬君って最低!」
「どっちか選べ!それでも男か貴様!」
「ご・・・ごめん・・・」

ヨロヨロと立ち上がる一馬
その様子を見て優子も広美も大きくため息をついた
一馬を一叩きした事で少し冷静になったらしい

「・・・じゃ、先生私達はそろそろコレで失礼します」
「待て鳴瀬川、話は終わっていない」

「いいえ、コレは私と一馬君の問題ですから。いくら担任でも先生が口出しする事ではないと思います。さっきは違うって言いましたけど、私達付き合っているので」
「ほう・・・言うじゃないか、一馬よりずっと話の筋が通っている。大人しい女だと思っていたがなかなか芯の強いところもあるじゃないか」

優子と広美の間に不穏な空気が流れる
一方の一馬はハラハラしながら二人を見守っている

「ではそういう事で」
「おっと、そうはいかん、お前のような若い女が一馬の家に一人で行くなんて危ないだろ? こんな奴でも男だからな、何されるか分かったもんじゃない・・・見過ごす訳にはいかんな」

「先生!学校じゃないんだから恋愛の自由があってもいいじゃないですか!」
「そういうのは私の目の届かない所でやるものだ、見た以上知らん顔はできん!」

優子の言葉に広美も強く言い返す
広美からすれば優子が堂々と一馬の恋人だと言っている事も許せないのだ

自分だって一馬と特別な関係にあるのに教師と生徒という関係上それを言う事ができない
言える事なら「一馬は私と付き合っている!」とハッキリ言ってやりたいのだ

「私達ちゃんと付き合ってますから放っておいて下さい!」
「教師である以上それはできん!」

一触即発の火花が優子と広美の目先で音をたてる
普段大人しい優子だが、恋する女はどこまでも強い
相手が大人の広美であっても一歩も引く事がなかった

一方の一馬は二人の迫力にすっかり脅えている
そんな緊張した空間の中で不意に一馬の腹の音が呻き声をあげた

途端に優子と広美のビンタが一馬に飛んでくる
一馬の頬からはじけるような音が再び辺りに響いた

「いい加減にして一馬君!」
「のん気に腹を減らしているんじゃない!この馬鹿!」
「ご・・・ごめ・・・」

一馬は口元を押さえてうつむく
しかし腹の音はグーグーと空腹を知らせている

一馬は今日の昼飯を鳴瀬川のサンドイッチしか食っていない
普段は鳴瀬川のサンドイッチと冷蔵庫のおにぎりの両方を食っている一馬である
既に腹は空っぽであった

「もぉ分かったわ、とにかく一馬君のご飯作ってあげなきゃね。じゃ先生私達はこれで」
「分かった、ならば私もついていく、それで手を打とう」

「ほ、本当についてくる気ですか先生?」」
「ココで押し問答するのも馬鹿らしくなったしな。それもダメならお前の親を呼んで無理矢理家に連れ帰ってもらってもいいんだぞ?お前の事だから友達の家に泊まるとか言ったんだろ?」

「そっそんな・・・うー・・・分かりました・・・」
「よし決まりだ。お前達先に行ってろ、私も買い物して後から行く。いいな一馬?」
「ふぁい」

「しっかり返事しろ」
「しっかり返事できないのは二人が手加減無しでビンタするからでしょ!」

こうして一馬と優子は一度広美と別れ、帰路を歩いていた
二人の間の空気は買い物中の明るさが失せてどんより曇っている

「・・・」
「あ、あのさ優子?怒ってる?」

「うん」
「だよな・・・ごめん」

「でもま、いいわ、宮野先生に見つかったのが運が無かったって事だし・・・」
「そ、そうか」

「・・・でも宮野先生ってあぁ見えて恋愛とか結構理解ある人だと思っていたんだけどなぁ・・・なんであんなに・・・あれじゃまるで一馬君が先生の特別な人みたい」
「んぐ!」

優子の鋭い女の勘に一馬の心臓が大きく悲鳴をあげる
一馬は冷汗をかきながら優子と共に歩き続けた

家についた一馬と優子はカレーの下準備をしながら広美が来るのを待っていた
米の準備は昼間優子が来た時に仕込んである
あとは時間がくれば自動で炊き上がりを待つだけだ

しばらくしてエプロン姿の優子がカレーの具を鍋で炒めている所に玄関チャイム(玄関に設置してあるピンポンって鳴るアレ)が鳴り響く
一馬が玄関扉を開くと広美が買い物袋を下げて入ってきた

「先生いらっしゃい」
「ほぉ~、ココが一馬の家か・・・」

「狭い所ですがまぁどうぞ」
「私の部屋よりずっと広いさ」

靴を脱ぐ広美に一馬が声を小さくして口を開く

「あの・・・分かっていると思いますが優子の前では・・・」
「分かってる、私だって立場がある・・・だが貴様もひどい奴だな・・・こういう時くらい私を頼っても良かっただろ?」

「今日非番だったじゃないですかっ職員室見に行ったんですよ俺っ」
「非番だって分かったなら直接アパートに来ればよかっただろっ」

「そんな事して留守だったら変な噂が出てヤバイと思ったんですよっ」
「電話すればよかっただろっ」

「番号知らないんですよっ」
「あーそうだったっ」

ヒソヒソと二人が会話を続けているとナカナカ戻ってこない一馬と広美が気になった優子が鍋をかき回しながら声を飛ばす

「一馬君?先生?どうかした?」
「あぁいや、なんでもない、スグ行くよ」

一馬は玄関の鍵をかけてから広美と共に台所へ向かう

「鳴瀬川はカレー作っているのか?じゃ私はそれ以外を用意しよう。いいか鳴瀬川?」
「え?あ、はい、お願いします先生」

広美は優子が真剣に料理している様子を見て手伝おうとは言わなかった
優子は一馬のために手料理をふるまうと張り切っていたのだ

広美はそんな優子の気持ちを察して一歩身を引いたのである
普段の広美は女同士の細かい気配りが上手いようだ

もっとも女の気持ちに鈍い一馬はそんな事に微塵も気付いていない
彼は女同士の気配りより広美の買い物袋の中身が気になるようだ

「・・・ところで先生は何買ってきたんです?」
「から揚げとかフライを色々・・・あとサラダの材料とか適当にな。一馬、皿はどれ使ったらいい?」
「あぁはい、今出します」

なんやかんやと三人は賑やかに夕食の準備を進めていく
ご飯が炊き上がる頃には優子の特製カレーも完成

こうしてテーブルの上にはカレーライスにサラダや各種お惣菜、野菜たっぷりの味噌汁が並んだ
一馬の夕食は予想外に豪華な晩餐となった

一馬のカレーライスはご飯もルーも大盛りで優子と広美のカレーに比べて1.5倍の量がある
食欲を誘う香りに一馬の腹はグーグーと鳴り通しだ

「よっしゃ!もう待ちきれないぜ!いただきまーす!」

三人が席に着いて声を合わせると一馬は勢い良くカレーを口に運んでいった
空腹だった事もあり一馬の皿はあっという間に減っていく

一馬の食いっぷりに優子と広美はしばし手を止めて言葉を失っていた
そんな二人の視線すら空腹時の一馬は気にならないようで、美味いと言いながらあっという間に大盛りのカレーを食べてしまった

「美味かった~おかわり!大盛りで頼むよ!」
「・・・」
「・・・」

「え?・・・あの・・・優子さん?お、おかわり・・・いいですか?」
「え?あ!うん、もちろん!」

優子は慌てて一馬の皿を受け取り炊飯器からご飯をよそっていく
一馬はサラダをつっつきながらカレーの到着を待っている
ちなみに優子と広美のカレーはまだ1/4も減っていない

「・・・一馬、お前そんな勢いで食って大丈夫か?」
「え?あぁ、今のはつい、ハハ・・・ごめん、あまりに空腹だったもんで好物のカレーを前にしてつい・・・」

一馬は思わず苦笑いを浮かべてミニトマトを口に運んだ
空腹時は静子からも「落ち着いて食べなさい!」とよく怒られているのである

「慌てなくてもまだまだあるからゆっくり食べてね一馬君、はい」
「ありがと、今度はちゃんと味わって食べるよ」

おかわりを受け取った後、一馬はようやく落ち着いてカレーを口に運んでいく
落ち着いているとは言え、その一口は優子や広美とは比べ物にならないほど大きい

「もぐもぐ・・・うんっ美味いよ優子、カレー美味い」
「良かった、いっぱい食べてね」

一馬の食いっぷりを嬉しそうに見ている優子
その横でカレーを運ぶ広美も一馬の様子を微笑ましく見守りながら優子の料理を褒めている
食事中は一旦休戦のようだ

「もぐもぐ・・・おかわり!」
「あ、うん!」

「いやぁ本当に美味いな優子の料理、また大盛りで頼むよ」
「え?また?三皿目だよ?そんなに食べて大丈夫?」

「平気平気、なんせ空腹だったからさ、まだ足りないって位だよ」
「ほ、本当かなぁ・・・」

優子は三皿目のカレーを用意する
一馬はから揚げやフライを美味そうに口に運んでいる
食事中一馬の口は休み無く何かを食い続けていないと落ち着かないようだ

「よく食うやつだなお前は」
「へへ、美味い物はいくらでも腹に入っちゃうんでね」

「あまり無理しないでね?はい」
「お、サンキュー」

言うなり優子から受け取った三皿目のカレーも美味そうに食べていく一馬
さっきまで嬉しそうに見ていた優子、微笑ましく見ていた広美だったが、一馬の食べるペースが一向に落ちないのを見てその顔に不安の色が表れてくる

「ふー美味しかった~」
「よ、良かった」
「あ、あぁ本当良く食うな」

「おかわり」
「嘘でしょ!?」
「無茶はよせ一馬!」

「じょ、冗談だよハハハ・・・」
「そ、そうよね、そうだよねウフフフ」
「全く、驚かせやがって・・・ハハハ」

一馬は少し残念そうな表情で程よく冷めた味噌汁をすすった
本音を言えばもう一皿食いたかった一馬である

その後、食事が終わると優子と広美は後片付けまでこなしてくれた
二人とも一馬の為に何かしてあげる事がうれしいようだ
一馬はお茶をすすりながら二人が洗い物をしている後姿を嬉しそうに眺めている

それも終わるとひとまずやる事がなくなって三人揃ってお茶をすする事になった
時刻は午後八時に近づいている

優子も広美も互いに様子を探り合っていたが、一番身の置き場に悩んでいたのは一馬である
広美がいる手前、優子をこのまま泊める事はできそうにない
しかし夕食を作ってもらっておいて帰れと言う訳にもいかない
だが二人一緒に泊まっていけとも言える空気ではない・・・

どうしたもんかと三人そろって言葉が出せないでいると、急に電話が鳴った
一馬が慌てて受話器を取る
電話の相手は静子だった

「もしもし?一馬?」
「あぁ母さんか、何?どうした?」

「いや、ちゃんと留守番してるかと思って」
「ちゃんとやってるって、そっちはどうだった?」

「あぁ、大したことないみたいだから予定通り明日帰るわ。戸締りしっかりして寝るのよ?」
「分かってる」

電話をきると優子と広美はそれぞれ帰り支度を済ませて椅子から立ち上がっていた

「じゃ一馬、私達はそろそろ帰るからな」
「またね一馬君」
「あ、あぁ・・・うん、じゃあまた」

一馬は玄関まで二人を見送って送り出した
思いがけない夕食にありついたまでは良かったが、その後のお楽しみは消えてしまった

広美がいなかったら今頃優子と一緒に風呂に入ってイチャイチャとお楽しみだったに違いない
もしくは広美のアパートに行っていれば今頃広美のベッドでアンアンとお楽しみだったのかもいしれない

二兎を追うものはなんとやら・・・
一馬は優子とも広美とも相手をする事ができないまま別れてしまった

しかしそれはそれとして立ち直りの早いのが一馬である
セックスができないならオナニーをすればいいじゃない

一馬の頭の中では久々の一人エッチへのワクワク感がみなぎっていた
セックスの気持ち良さには負けるものの一人気ままに欲望を解消できるオナニーはそれはそれで最高だ

何より今日の一馬は今朝からまだ一回も射精をしていない
最近は朝から静子に抜いてもらったり、昼間に優子とセックスしたりと、どっかで射精している一馬だが今日は一度も出していない
つまり精液満タンで欲望ギンギン状態だ

静子が風呂に入っている間にエロ本使ってオナニーしていたあの頃の状態である
考えてみれば時間を気にせずオナニーできるというのも素晴らしい環境なのだ

「よーし!今日は風呂に入った後たっぷりやるか!」

風呂掃除は昼間済ませているので後はお湯を張るだけである
一馬はお湯の蛇口をひねって浴槽にお湯をため始めた

「風呂の後はアイスもいいけどオナニーもね・・・って・・・あ!そうだ!アイス!」

一馬は優子と一緒にデザートにアイスを買っていたのを思い出して冷凍庫を開けた
そこには一馬のカキ氷と優子のバニラアイスが入っている

一馬はカキ氷のカップを取り出して台所からスプーンを持ち出しテレビを見ながら食べ始めた
時間は8時15分

テレビをみながらも小まめに時間をみて風呂のお湯がどれだけ溜まっているか気を配る一馬
口の中ではイチゴ味のカキ氷がシャリシャリと音を立てている

「やっぱアイスはカキ氷に限るな~ カキ氷はハズレが無いからな~」

上機嫌で氷菓子を味わいテレビのバラエティを眺める一馬
やがてカキ氷を食い終えた所で時間を見ると8時22分

空のカキ氷カップをゴミ箱に捨てて風呂のお湯を見るとお湯は少し少ない状態だったが、どうせ自分ひとりが入るだけなんだからコレでいいかと判断して一馬は蛇口を閉めた

一馬はリビングに戻ってテレビ番組がCMに入るまで見ようとゴロリと横になった
誰も居ない家に一人でゴロゴロするのはナカナカ贅沢な気がしてくる
やがてテレビに飽きた一馬はあくびをしてCMを待たずにテレビを消した
時間を見ると8時34分

一馬が風呂に入ろうと立ち上がったその時、不意に玄関チャイムが鳴った

This story is to be continued

母さんはセックスを断れないCG担当 黒木 一朗 (敬称略)
HPアドレス http://1st.geocities.jp/kuroki_kazuaki/