乾いた風が駆け抜けて、白骨化した獣の亡骸に砂を叩きつけている。
人間が敷き詰めた石畳も、露出している部分はだいぶ少なくなってしまった。

ここはマドロッカ街道 。

王都オデイアと魔法都市ネフロを結ぶ唯一の公路だ。
旅人は皆、様々な理由を抱えながら、この乾いた大地を南北に走る路を辿っていく。

自然豊かな国ではあったが、何故かこの地方は砂漠化が進んでいた。
研究者によれば、古代の遺跡が今も稼働し、精霊力を吸い続けている故、
自然の調和が崩れているのではないかという話であった。

決して楽な道中ではないが、生き延びるためにやむなく通らざるをえない者達が多い。
今、砂嵐の中を力なく歩く五名の旅人もそうだ。
彼らにはもう、命以外で失う物はなかった。

弱者からもお布施と称して金を巻き上げるメシアン党の汚職騎士達に全てを奪われ、
残るはその肉体を捧げるのみであった者達。

彼らは最後の望みとして、魔法都市ネフロを拠点として活動するアルカナ党の元へと、
命をかけた旅をせざるをえなかったのであった。 

「お母さん…まだ…まだつかないの?」

ボロボロの布切れにくるまっている少年が砂嵐に目を細めながら母親を見上げる。

「もう少し、もう少しよ」

その言葉を聞いたのは何度目だろうか。
少年は力なく足元に視線を落とした。

その時、旅人の列の最後尾の男が「ぎゃっ!」っと短い悲鳴をあげて前のめりに倒れた。

男の背中には、鳥の羽が括られた長い木の棒が突き刺さっていた。
旅人達が振り返ったその時、砂塵の中から子供のような影がいくつも飛び出してきた。

青黒い皮膚には白い不気味な模様が塗られ、長い耳がやけになめらかに揺れている。
黄色い眼光は鋭く、怯える旅人達を睨みつけている。

マングル族と呼ばれる亜人である。

本来は北西の地方の山岳地帯に生息するはずであったが、
近年では人里まで進出して人々を襲っていた。

旅人達を襲ったマングル族は三体。
四対三。
通常ならば人間側が負ける事はないが、人間側は弱者であり、一人が子供だ。
マングル族達は勝利を確信し、舌なめずりをしている。

そして、両手に石器の短刀を持ったマングルが、
怯えて地面にへたり込んでいる子供へ跳びかかった。

この獲物はさぞかし美味かろう!そうマングルが思った刹那、
子供の前に人影が現れ、その胸に二つの短刀が吸い込まれた。

「ぐはっ!」

子供の前に立つ髭面の男の口から血が吹き出す。
そして、小麦が詰まった重い麻袋のように地面に倒れて砂煙を巻き上げた。

「きゃぁーっ!」

子供の母親の悲鳴が響き渡る。

狙った獲物を仕留め損なったマングルは、
動かなくなった男からつまらなそうな顔で短刀を引き抜く。 

「も、もう終わりじゃぁ!!」

子供を抱きかかえながら涙する母親の横で絶望する老人。 
誰ひとりとして、この敵を排除する事ができない事は明らかだった。 

旅人達を、死の気配が包み込む。

マングル達が顔を見合わせ、一気に獲物を仕留めようと頷き合う。
石器がそれぞれの獲物に向けられ、鈍い光を放つ。

風が途切れ、一瞬の静寂が訪れた。

死ぬ!

母親は、息を止めて息子を強く抱きしめた。 

だが、死は彼女達には訪れなかった。 
代わりに石畳に前のめりに倒れるマングル族。

その後ろには、三つの人影があった。

「おいおい、オレの合図を待てよ。」

赤い布を頭に巻いた大柄な男が、黒い外套に身を包む長髪の女に声を荒らげる。

「いい加減そういうのにウンザリしてんのよねぇ。
倒せたんだからいいじゃない。」

長髪の女が、面倒くさそうに男をあしらう。

そんな二人を呆然と見つめる親子の元に、最後の人影が歩み寄る。

「もう大丈夫よ。さぁ、立ち上がって!ネフロはもう少しよ。」

また「もう少し」という言葉を聞いた少年だったが、
短髪の女性が言うその言葉は、本当に「もう少し」だという気にさせてくれた。 

その女は親子を立ち上がらせると、言い争う仲間の元へ戻る。

「ほらほら、助けた人達の前で喧嘩しないでよ。カッコ悪いなぁ。」

「そうは言うがな、ケイ。コイツはまったく連携というものをだな…。」

「ラウド、あんたってホント面倒くさい男ね。」

険悪な雰囲気の二人は、顔をそれぞれ別の方へ向ける。

「ラウド、ミラ、そういうのは安全な場所についてからにしましょう。
さぁ、彼らを無事に送り届けないと。」 

二人は、ケイの言葉に渋々同意し、歩みを進めた。

窮地を脱した旅人の三人もそれに続く。
息子を救われた母親は、身代わりとなった男にそっと礼をして立ち去る。
この危険な土地では、死者を埋葬している暇などない。 

一行は、風吹きすさぶ街道を南へと歩む。

砂塵が舞い散り、死者達を包み込んでいった。


Fin.

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●あとがき

唐突に読み物を書き上げてみました。
たまにはこういう記事もいいものじゃないかなと思いまして。
ゲーム内では描けない部分をこうやってお披露目するのも楽しいものですね。 
キャラクターを作っていく時は、こういう背景を考えながら作っているので、
表に出せないとちょっと勿体無いと思ってしまうんです。
昔は結構小説を書いていたので、それを思い出しながら書いてみました。
稚拙な文章だとは思いますが、お楽しみいただけたら幸いです。
他にもこういう話をお届けできればなぁと思いますが、
まずはゲーム自体をがんばれよって話ですよね。
がんばります! 

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